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“アイデア出しまくるAI”を開発、博報堂が考える「創造力の限界突破」これからのAIの話をしよう(ブレスト編)(4/5 ページ)

» 2019年07月05日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 八幡さんは「俯瞰して情報を見渡せるメリットが大きい」と強調します。「人間の発想を端から端まで見渡すことはプロの人間でもできません。私たちは情報をインプットしていったんそれを寝かせたりしますが、AIは人間が何回も会議しないと出ないような情報をすぐ出してくれるのです」(八幡さん)

 確かに、ジェームス・W・ヤングも著書「アイデアのつくり方」の中で、何も思いつかない状態になったら一度アイデアを放置することを推奨しています。思考を手放している最中に、アイデアは突然降りてくるものだというわけです。もしそんな偶然に頼らざるを得ない状況から解放されるなら、大勢の人の働き方が変わるでしょう。

 これまで多くのメディアや有識者が「AIと人間の対立」構図をあおってきました。しかし、今回のようなツールは「AIと人間の共創」を促すものといえます。AIが人間の創造的な仕事を奪うのではなく、人間が思い浮かばない想像の穴をAIが埋めていくという捉え方です。

 小林さんもこの考えに賛同します。「スティーブ・ジョブズがマッキントッシュを作ったとき、いまと同じようにコンピュータが人間の仕事を奪うなんていわれていました。ジョブズは“コンピュータは知の自転車だ”と表現しましたが、人間だけでは出せない能力を発揮できる道具という意味ではAIも自転車も同じです」(小林さん)

AI TISの園田健太郎さん(右)

「本当の創造性」は選ぶ能力

 では、発想やひらめきとは、そもそも何なのでしょうか。赤松さんは「アイデアだけでは意味がないんです」と指摘します。

 例えばトロフィーの色は金・銀・銅の3色しかありませんが、「他にも色があると良いよね」と誰かが発言したとします。一見新しいことを言っているように聞こえますが、赤松さんは「この時点では実際は何もひらめいてないんです」と一蹴します。

 「例えば、金銀銅のトロフィーは成績上位の人を褒めるためのものですよね。だったら、カラフルなものを用意していろんな褒め方をしよう、とまで説明できればすごく良いアイデアに聞こえます。世の中の課題を解決する具体的な内容になって初めてひらめきになるんです」(赤松さん)

 われわれが普段何気なく行っていることは、「創造力」「創造性」という言葉でひとくくりにできないのかもしれません。

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