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“アイデア出しまくるAI”を開発、博報堂が考える「創造力の限界突破」これからのAIの話をしよう(ブレスト編)(2/5 ページ)

» 2019年07月05日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

「AIの創造力」を試してみた

 日本中のオフィスの会議室で、日々ブレスト会議が行われているのではないでしょうか。しかし、良いアイデアが浮かばず誰も発言しなくなったり、自分が提案したアイデアが他の人からダメだしされたりすると、その場は重苦しい空気に包まれてしまいます。

AI 博報堂の八幡功一さん

 博報堂の八幡さんは「人間だけでたくさんアイデアを出すのは難しいですが、AIを使えば人間では思い浮かばない切り口やヒントを大量に見つけてくれます」と説明します。

 AIブレストスパークでは、博報堂のクリエイターが打ち合わせで使っている発想プロセスをアルゴリズムに落とし込む「博報堂発想支援メソッド」を実装しています。AIが、入力したキーワードに関連する単語をネットから探してきて、幅広い単語を網羅できるよう視覚的に表現します。

 八幡さんは「ブレストの鉄則は“拡散と混沌なくして跳躍なし”」と強調します。アイデア出しを続けると、「いま、何の議論をしてるんだっけ」「本当にこれで良いのかな」と、場が混沌とする時間が来ます。そこまで混沌とすれば、違う尺度やモノの見方に気づけるという考え方ですが、AIを使ってその跳躍への近道をしようというわけです。

 AIブレストスパークの実力を試すべく、取材中に頭に浮かんだ「洗剤」というキーワードを入力してみました。すると、ネット上の情報を収集・整理した後に「洗剤」に関連する「キッチン」「浄水器」「容器」「サイズ」「香り」といった言葉が、クモの巣のように張り巡らされた状態で表示されました。

AI AIブレストスパークの画面。「洗剤」と入力してみる

 人間が考えても思い付きそうな内容ではありますが、ホワイドボードに1つ1つ単語を書き記すよりは、はるかに効率が良さそうです。ここから「香り」を起点に「数量限定」「詰め替える」「カゴ」という言葉が登場し、さらに「カゴ」を起点に……と関連単語が広がっていくので、やがて意外な単語に出合えるようになります。

 辞書が搭載されているので、意外すぎてつながりが浮かばない単語は、その場で出典元を調べられます。また、「カゴ」で生活シーンを調べたいときのためにテレビ番組のデータベースも用意されていて、「カゴ」にまつわるシーンを調べられるようになっていました。1つのお題に対して、いったん情報を俯瞰(ふかん)し、いろいろな角度で吟味できるのはツールを使う強みといえるでしょう。

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