国立天文台は7月9日、米SpaceXが計画する巨大通信衛星ネットワークに対し、天体観測へ悪影響があるとして懸念を表明した。米国の天文台では銀河の観測中にSpaceXの人工衛星の光が多数の斜線として写り込むなど、実害が発生しているという。
SpaceXは、衛星通信による世界中へのインターネット通信サービスを提供するために、2020年代中頃までに1万2000基の人工衛星を打ち上げる「スターリンク」計画を進めており、現在までに約60基が打ち上げられている。
国立天文台は、「この衛星群が完成すれば、空には常に約200基の人工衛星が見えることになる」と指摘。人工衛星は太陽光を反射するため、可視光や赤外光での観測では「人工の星」として映像に写ってしまう。スターリンク衛星群が夜空を横切る様子は「銀河鉄道999のようだ」とネットで話題になったが、空を覆うほどまで増えてしまうと天体観測へ悪影響が出ることは想像に難くない。
世界の天文学者で構成される国際天文学連合は6月にSpaceXの衛星群に対し、「可視光での観測だけでなく、人工衛星と地上を無線通信で結ぶ電波天文観測への影響も懸念される」と発表しており、国立天文台もこの発表に同調した。
「現代社会では通信衛星や放送衛星によって豊かな生活を送れる」(国立天文台)と人工衛星の有用性は認めつつ、「人類が宇宙をよりよく知るためには、空がきれいに見える状態を維持することが必要。世界中の天文機関や関連衛星事業者と協力して解決していきたい」(同)としている。
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