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「フリーランス」は老後をどう設計するべきか(2/2 ページ)

» 2019年07月10日 07時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
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フリーライターの限界年齢

 筆者は現在サラリーマンと副業ライターの二足のワラジ状態だが、サラリーマンとしては65歳で終了したとしても、それ以降続けていける仕事が必要になる。しかし駐輪場の管理やコンビニのバイトで繋いでいくというのも、年齢的にしんどい話である。

 シビアな話、筆者がやってきたITやAVといったジャンルで、65歳のフリーライターに需要があるかというと、これは相当厳しいと言わざるを得ない。過去オーディオ評論家では、メーカーのアドバイザーや宣伝広告、地方の講演や資産家のオーディオシステム選定・評価で老後も安泰という時代もあったそうである。ただ、今はオーディオシステムにお金をかける人もいない。

 筆者にはフリーライターの友人も多いが、年上は山田祥平さん、塩田紳二さん、麻倉怜士さんぐらいだろうか。このあたりが現役の先頭集団である。同い年なのはケータイ評論家として知られる法林岳之さんぐらいで、あとはだいたい筆者より若い。西田宗千佳、津田大介をはじめ、現在の論客としての主力層は40代半ばである。

 40代で老後の設計をせよと言われても、なかなかピンと来ないはずだ。筆者もそうだったが、一番脂がのって忙しい時期に、自分がジジイになった時のことなど想像できるものか。まだあと10年ぐらいは今の状態で走れるし、むしろ貯金するならそのときである。

 筆者もそのあたりで離婚して娘と2人暮らしになったため、かなり生活に余裕があった。ただ娘が小さかったため、夜に飲みに行くようなお誘いはほとんど断ってしまったので、脂がのってる時期に付き合いの幅を広げるということがほとんどできなかった。

 今どきノミニケーションか、と思われるかもしれない。だがフリーランスと、企業人である編集者、メーカー広報さんらと近々の仕事ではなく、コネクションとして人間関係を構築していくのは、こうした夜の飲み会ぐらいしかないのである。こっちはフリーランスなので昼間でも時間があるが、相手に時間がないのだ。これはサラリーマンになって分かったことだ。

 付き合う人間の幅が広がれば、文章書き以外にもいろいろと仕事の幅が拡がる。65歳を過ぎても頼りにしてもらえるジャンルに巡り会えたかもしれない。今10歳年下のフリーライターの皆さんにアドバイスできるとすれば、忙しいうちに年下の企業人と顔を繋いどけ、ということである。そうすれば、こっちが歳とったときに偉くなって、頼りにしてくれるはずだ。

65歳からできる「ニッチ」を見つける

 そういうことができなかった筆者は、作戦を変更することにした。現在行政書士を目指しているのは、今から10年もすれば、団塊の世代と言われた層が鬼籍に入ることで、相続関係の仕事が急増すると見ているからだ。

 もし相続が争いになれば弁護士の出番だが、逆に訴訟リスクを避けたいのであれば行政書士のほうが当たりがいい。いきなり弁護士から電話がかかってきたら、ほかの相続人に訴訟をやる気なのかと思われてしまうリスクが高い。共同相続人はほとんどの場合が兄弟姉妹になるので、お互い言いたいことを言ってしまう。一度感情がこじれてしまうと、他人同士よりも修復が難しい。

 飛行機のマイルが相続できるかというように、今後はこのような電子マネー、仮想通貨、ポイント等の相続は、専門性の高い仕事になってくると思われる。加えてネットアカウントの閉鎖や、スマートフォンの中身の処分、外付けHDDの破壊など、様々な業務が発生するだろう。法律に強いだけではダメで、IT関連知識を持った法律家が必要となってくる。

 10年後に団塊の世代を相続する子供世代は、おそらく50代半ばになっているだろう。今の40代半ば、つまり顧客は西田さんらの世代である。電子マネーや仮想通貨の相続の話になれば、現時点では法律家より客の方が圧倒的に詳しいというのが現実だ。それで相続手続きがうまくいくはずはない。

 ITやサービスの流れなど、基本的なリテラシーを身につけることは、ちょっと本やネットで調べただけでは当分追いつけるものではない。顧客とネットサービスの話がちゃんとできて、相続手続きに10年のキャリアがある65歳、そういうところに筆者の強みが出てくるのではないかと思っている。

 ポイントは、定年してから自営でできる仕事の種を蒔いておくということだ。

 筆者の実家には「小寺商店」という酒とタバコの販売免許を持っている個人商店があるが、これは公務員であった祖父が退職金を使って始めた小売業である。父もそれを継いで、老後の生活資金と生きがいを確保した。今はそうした個人商店が生き残れる時代ではなくなってしまったが、当時はかなりいけていた商売だった。そうした先を見るセンスは持っておきたいものである。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年7月8日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額648円・税込)の申し込みはこちらから

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