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“DoS攻撃並み”のトラフィックでまひ寸前! 福岡大学NTPサービスの悩み(1/3 ページ)

» 2019年07月10日 08時00分 公開
[高橋睦美ITmedia]

 どんなサービスでも、国内外を問わず多くの人に使われるのは歓迎すべきことです。けれどあまりに多くの人に使われ、頼られた結果、自身のインフラに想像以上の負荷がかかってしまったらどうでしょうか。

 今、そんな状況にあるサービスがあります。福岡大学が1993年10月から提供し続けている、日本で最初の公開NTPサービスです。インターネットが研究の対象を超え、社会やビジネス、日常生活を支えるインフラとなるにつれ、同大学の公開NTPサービスの利用者も劇的に増加し、今では1つの大学の手に余る規模のトラフィックがあるといいます。

 それなら「あくまでボランティアで商用サービスではないのだから、いっそ停止してしまえばいいのではないか」と思う人もいるでしょう。ところが、そう簡単には停止できない事情があるのです。

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黎明期のネット利用者を支えた、研究・ボランティアベースのサービス

 NTPとは「Network Time Protocol」の略で、文字通りネットワーク越しに正しい時間を配信し、サーバやPC、ネットワーク機器の内部時計を合わせるためのプロトコルです。PCなどに搭載されている「NTPクライアント」はシステム内の「NTPサーバ」から正しい情報を取得します。そしてこのNTPサーバはさらに上位のNTPサーバから時刻情報を取得する――という具合に、DNSなどと同じような階層構造になっています。

 では、普通の企業や家庭のユーザーはどのNTPサーバを参照すればいいのでしょうか。たいていは各社・各家庭が利用している通信事業者(ISP)が提供するクローズドなNTPサーバに問い合わせますが、中には、インターネットに接続している機器ならどこからでも参照できる公開NTPサーバを利用することもあります。

 福岡大学のサービスも、そんな公開NTPサーバの1つです。日本標準時を配信している情報通信研究機構(NICT)よりも古くから時刻情報を提供してきました。ブロードバンド接続などという言葉はなく、商用利用自体ようやく始まったばかり――そんなインターネット黎明期から続いている、数少ないサービスといえるでしょう。

 当時、TCP/IPやインターネット接続自体が研究対象だったこともあり、FTPやHTTPといったインターネットで利用できるサービスの多くは、大学・研究機関がボランティアで提供しているものが少なくありませんでした。

 利用できるリソースが限られていたことから、ユーザー側もありがたくこうした公開サービスを活用。時にFTP経由でフリーウェア・シェアウェアをダウンロードし、時に公開NTPを用いて、別途インストールしたNTPクライアント(当時のクライアントOSにはほとんど標準搭載されていませんでした)で時刻を合わせていました。

 そんな接続先の情報は「共有知」としてシェアされてきました。いち早くサービスを提供した福岡大学のNTPサーバのIPアドレスも、貴重なリソースとして雑誌で紹介されたり、機器の設定方法を説明するサイトでサンプルの中に埋め込まれたりして、広く知られるようになったのです。

急増するNTP問い合わせ、規模はちょっとした“DoS攻撃並み”に

 それで終わればめでたしめでたしなのですが、想像を上回る規模でインターネットが普及し、ありとあらゆる人に使われるようになった結果、福岡大学の公開NTPサービスにはとんでもない量の問い合わせが来るようになったそうです。

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