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逮捕も起訴も入金もcharge、使い分けは?IT基礎英語

» 2019年07月29日 08時38分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 チャージ、と言われて真っ先に思い浮かべるのは、電子マネーの入金か、それともスマートフォンやタブレットの充電だろうか。実はこの「charge」という単語には、ものすごくいろいろな意味がある。

photo charge

 特にややこしいのは刑事事件に関連したcharge。何か事件が発生すると、警察が容疑者を特定して場合によっては指名手配し、容疑者が逮捕されれば検察に送致され(送検)、検察が公訴を提起(起訴)する。警察が捜査に乗り出す前に、被害者が被害届を出したり、当事者が告訴したり、第三者が告発したり、または「コイツのせいでひどい目に遭った」と誰かを非難することもある。

 日本語ではそうした用語を全て使い分けなければいけないのだけれど、英語の場合、これを全部「charge」の一言で片づけることができる。

A 20-year-old cybersecurity worker has been arrested in Bulgaria and charged with hacking the personal and financial records of millions of taxpayers (Reuters

ブルガリアで20歳のサイバーセキュリティ技術者が逮捕された。納税者数百万人の個人情報や資産情報に対するハッキングの疑いが持たれている。

 この場合、容疑者はまだ逮捕されたばかりで捜査も初期の段階ということなので、chargeは「容疑がかけられている」と解釈できる。

 一方、中国の情報当局者が米国やフランスの航空宇宙企業から技術情報を盗み出そうとしたとして、米当局に訴追された2018年の事件。

The charged intelligence officers, Zha Rong and Chai Meng, and other co-conspirators, worked for the Jiangsu Province Ministry of State Security (“JSSD”), headquartered in Nanjing.(米司法省のプレスリリース

 起訴された情報当局者のZha Rong、Chai Mengの両被告および共謀者は、南京に本部のある中国国家安全省の江蘇省支部で働いていた。

photo

 こちらのchargedは発表資料に中に「indictment」とあるので起訴だと分かる。ただし米司法省がこの発表を行った時点で、被告全員の身柄を拘束していたわけではないらしい。被告が起訴されると裁判所に出廷して公判が始まる日本の制度とはだいぶ事情が違う。

 ということで、刑事訴追制度は国や州によって大きく異なる。しかもニュースや発表資料にいつもindictかarrestかが明記されているとは限らず、chargedとしか書いていないこともある。それを日本語にする場合、逮捕なのか起訴なのか、それとも警察が容疑者とにらんでいるだけなのかを調べまくる羽目になる。

 さらに日本のマスコミには、逮捕された人には「容疑者」、起訴された人には「被告」を付けるという決まり事があるので、どちらかが分からなければ記事が書けない。犯罪者だろうが要人だろうが企業経営者だろうが、みんな呼び捨てにできる英語の記事が時々うらやましくなる。

 英語のchargeは、ラテン語で荷を積むという意味の「carricare」に由来するとされている。逮捕や起訴、充電、入金などは、人に罪を負わせたり、スマートフォンに電力やお金を積んだりすることと考えると分かりやすい。

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