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「機械に代替されないデータサイエンティスト」に必要な能力とは?これからのAIの話をしよう(コンサル編)(1/3 ページ)

» 2019年08月05日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 「機械学習や統計学を駆使するデータサイエンスビジネスの世界は、どうやら人月商売(※)ではうまくいかなそうだ」という考えが浸透したのが平成の終わり。しかし、AI・データ活用に正解はなく、令和になったいまでも各社手探りの状況が続いています。

 企業は、どうすればデータサイエンティストの能力を最大限に発揮させ、ビジネスを拡大できるのでしょうか。組織を運営するマネジメント層と、現場で働くデータサイエンティストが真剣に考えている課題です。

 データ分析組織を立ち上げた企業や、データサイエンティスト自身が意識すべきことについて、コンサルティング事業を手掛けるイーストフィールズ創業者の東野智晴さんに聞きました。東野さんは2009年ごろからデータ分析業務をしており、さまざまな案件を担当する中で、各企業が抱える課題が見えてきたといいます。

※:「人月」は1人の人間が1カ月で行える作業量を表す単位。システム開発に必要なコストを語るときに使われる

連載:これからのAIの話をしよう

いま話題のAI(人工知能)には何ができて、私たちの生活に一体どのような影響をもたらすのか。AI研究からビジネス活用まで、さまざまな分野の専門家たちにAIを取り巻く現状を聞いていく。

(編集:ITmedia村上)

現場やクライアントの「納得感」をどう得るか

データサイエンスに詳しい東野智晴さん

 2009年に新卒で損害保険会社に入社後、一貫してデータサイエンスを扱う仕事に従事してきたという東野さん。13年にコンサル企業に転職してすぐにデータサイエンスブームが訪れたため、希少な人材として扱われたようです。

 東野さんが意識していたのは、データ起点ではなく課題起点で考えること。例えば、データサイエンティストがクライアントに対して「統計的にこういう結果が出ました」と話し、「それで?」というリアクションが返ってくるケースを多く見てきたといいます。単にデータを見せるだけでは相手の納得感を得られず、課題の解決にはつながりません。

 また、AI導入でもよく問題にされることですが、得られた分析結果を基に業務のルールを変える場合は、現場を納得させる必要もあります。

 ある製薬会社へのマーケティングオートメーション導入のコンサルティングをしたときは、「お客さまごとに関心のありそうなメールの内容をデータ分析でスコアリングし、一定のスコア以上のお客さまだけに該当するメールを送る設計にできないか」という相談が来たそうです。しかし、東野さんはそのやり方ではメール配信を行う現場の理解を得られないと考え、それは無理だときっぱり断りました。

 「『スコアが50点以下だから、この人にはメールは送りません』というブラックボックスのルールでは、現場は納得しないですよね。ロジックが複雑すぎて意図を理解できなければ、機械が勝手に判断しただけじゃないか、という反発も生まれます。配信数のノルマがあるならなおさらです」(東野さん)

 そこで東野さんは、実際の運用を考えて、根拠がはっきりしていて分かりやすいルールを提案しました。例えば、同じ人に一定数以上のメールを送らない、メール内でクリックがなかったらその後のメールを送らない、などです。

 この案件の主な目的は、「メールの配信を拒否されないようにすること」だったので、それを解決できれば複雑なロジックは必要ありませんでした。長い目でその後の運用を考えるなら、現場の理解を得ることはとても重要でしょう。

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