スマートフォンの画面にQRコードやバーコードを表示させて代金を支払うコード決済。「PayPay」の“100億円キャンペーン”や「7pay」の不正ログイン問題などで、良くも悪くも日本での認知度が高まっている。
一方、中国では都市部を中心に数年前からコード決済が爆発的に普及している──というのは広く知られた話で、筆者も2018年に深セン市を訪れたとき、コード決済の普及ぶりを肌で感じてきた。大きな店舗はもちろん、個人経営の露店に至るまで、老若男女がスマホを取り出し、キャッシュレスで支払いを済ませていた。
キャッシュレスに慣れた中国人なら、海外旅行先でもコード決済を使いたいと思うのは自然な流れだろう。支払いが便利になればインバウンド消費を促すきっかけにもなり、日本側にもメリットがある。そんな背景から、中国の2大QRコード決済サービス「Alipay」「WeChat Pay」を日本でも使えるようにする動きが小売業界でも徐々に浸透しつつあるようだ。そこで今回は、日本で中国のコード決済サービスが使える仕組みを探ってみた。
日本で中国のコード決済サービスが使える仕組みを教えてくれたのは、日本恒生ソフトウェア(東京都新宿区)の林雁鳴(りんがんめい)部長(決済事業部ビジネス推進部)だ。05年設立の同社は、中国で証券取引システムなどを手掛ける恒生電子股份(浙江省杭州市)の日本法人として、システムインテグレーションや決済事業を手掛けてきた。ちなみに恒生電子股份の筆頭株主はアリババグループだ。
同社が日本国内のAlipay加盟店第一号を開拓するなど、中国からのインバウンド増加に合わせ、早いタイミングで中国コード決済の加盟店開拓に力を入れてきた。
日本の店舗が「Alipay」や「WeChat Pay」を導入するためには、日本恒生ソフトウェアのような事業者と契約する必要がある。同社のように決済サービスの加盟店を管理する事業者は、割賦販売法における「アクワイアラー」(加盟店契約会社)と規定されており、クレジットカード会社と同様に経済産業省への登録が必要だ。
Alipayの決済手順はこうだ。基本的には日本のコード決済と同様だが、今回は店側が導入する決済専用アプリのデモを実演してもらった。
客からAlipayあるいはWeChat Payでの支払いを要求された店は、決済用の専用アプリを起動する。
店が決済金額(ここでは5円)を入力し、客に目視で確認してもらった後、「スキャン」をタップして客のスマホに表示されたQRコードをスキャンする準備をする。
客側は、アプリ(この場合はAlipay)を起動して自分のQRコードを呼び出す。上段左から2番目の「付钱」アイコンをタップする。
客のスマホに表示されたQRコードを読み取る。奥の白いiPhoneが客で、手前の黒いスマホが店の端末だ。
支払い処理が完了したところ。店のスマホ(右)には「5円」の支払い完了画面が表示され、客のiPhone(右)には、「0.32元」(取材日のレートは1元=16円弱)の決済完了画面が表示された。
ここまで紹介したのは店がスマホで客のQRコードを読み取る方式だ。逆に店に設置されたQRコード表示を客の端末で読み取り、客が金額を入力して支払う方式ももちろん使える。
決済が完了すると、即座に客のAlipay内口座から5円に相当する0.32元が引き落とされる仕組みだ。「後日、Alipayから日本恒生ソフトウェアに入金されるので、手数料を差し引いた上で、月に1度か2度の頻度で加盟店に日本円で支払う」(林部長)という。次の図は、決済処理のデータの流れとお金の流れを図式化したもの。
日本では「7pay」の不正ログイン問題があったばかりなので、コード決済に対するセキュリティ体制は気になるところ。中国ではセキュリティ強化を主な理由として、店舗に設置されたQRコードを読み取る方式の場合、18年4月からコード決済に1日あたり500元(約8000円)の限度額が設定された。これは設置したQRコード表示の上に、悪意のある第三者が不正に自分のQRコードを貼り付けて売り上げを横取りするという事件が多発したためだ。
ただし、客のスマホに表示されたQRコードを店舗が読み取る方式では、決済のたびにQRコードが動的に生成されるため、不正送金の可能性は限りなくゼロに近い。そのため500元の限度額は適用されない。
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