「キズナアイたらしめるもの」とは何か
「このまま消えてしまうのでは」──VTuberの先駆け「キズナアイ」に起きた「分裂騒動」 “1号”の投稿動画減少、ファンの不安に本人や運営元が説明(1/2 ページ)
3Dモデルのキャラクターを用いてYouTubeなどに動画を投稿する「バーチャルYouTuber」(VTuber)。その先駆けの一人である「Kizuna AI」(キズナアイ)に関して、現在“騒動”が起きている。もともと1人だった「中の人」が4人に増え、しかも最初の「中の人」の動画投稿頻度が著しく落ちたからだ。
ファンからは「このまま最初の中の人が消えてしまうのではないか」「この企画は彼女が望んだことなのか」など不安の声が上がった。これに対し、運営元のActiv8が8月16日に中国・Bilibili動画で声明文を発表。キズナアイさん自身も同日、動画で「私(最初の中の人)が消えてしまうというのはない」と説明した。
キズナアイに何があったのか。事の始まりから現在までを振り返る。
5月 キズナアイが4人に分裂
事の始まりは、キズナアイさんが5月29日に投稿した「キズナアイが4人いるって言ったら信じますか? #1」という動画。動画内には従来のキズナアイさん(以降、区別のため1号とする)と、バーチャル空間で動画編集をしているキズナアイさん、ゲーム実況をしているキズナアイさん、踊りを見せるキズナアイさん──と見た目の変わらない4人のキズナアイさんが登場する。
動画は10番まで続くシリーズとなっており、「見た目が変わったらキズナアイではないのか」「頭のぴょこぴょこを外したらキズナアイではないのか」「声を変えたらキズナアイではないのか」──など、「キズナアイたらしめるものは何か」を問いかける。
このシリーズの投稿以降、投稿動画には複数のキズナアイさんがしばしば登場するようになった。
6月 誕生日イベントで1号さんが胸中を吐露
1カ月後の6月30日には、キズナアイの誕生日イベント「A.I. Party!2019 ~hello, how r u?~」が開催され、壇上で1号さんは「私(キズナアイ)の可能性を広げていくためにこの決断をした。迷いはないが、皆を不安に思わせることも分かっていた。正直すごく不安もあった」と経緯を説明した。
5月末に突然始まった「分裂」に動揺するファンに対し、1号さんが自身の考えを初めて説明する機会となった。
「絶対に私(1号)は消えない。今回のことで離れていってしまう人もいて寂しい……。言葉にこんなに詰まるのは初めてで。ずっと好きでいてとは言わないので、どこかで見ていてほしい」と、複雑な胸中を吐露した。
同イベントでは、「4人目のキズナアイ」として、中国語を話すキズナアイさん(以下、4号)も登場した。
7~8月 1号さんの動画投稿数が激減
誕生日のイベントで「分裂」の経緯を説明したものの、7月後半になって1号さんの動画投稿やライブ配信の機会が激減する。それに代わるように、他のキズナアイさんによる動画が投稿された。
この「1号さん不在」の状況に対し、ファンの不満が噴出した。Bilibili動画内のキズナアイ公式チャンネルのファン数が、100万人に届く寸前だった8月6日を境に激減。米国のネット掲示板・Redditに投稿された、キズナアイ分裂騒動を追う書き込みによれば、100万ファン到達の瞬間を1号さんがいるときに取っておくため、ファン登録を解除するファンが相次いだという。
運営「初期ボイスモデルが活動休止するということはない」
運営元のActiv8は8月16日、「ファンのみなさまの不安を解消したい」という思いの下、Bilibili動画内に中国語と日本語で声明文を発表した。
声明文は、「キズナアイにおける『分人』という考え」と、「初期ボイスモデル(1号)の動画投稿頻度が下がった理由」の2点について説明している。
同社は、「自分というものは他人によって引き出される存在。本当の自分は存在せず、『子供と接しているときの自分』も、『かしこまっているときの自分』も全てが『自分』であるという考え方が『分人』だ」と概念を説明する。
その上で、「『中国の人たちと自分の言葉で話したい』と思った分人が、中国語を話せる4人目のキズナアイなのかもしれない」としている。
「分人」は、小説家・平野啓一郎氏のエッセイ『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書、2012年)に登場する概念。作中では、いろいろな相手と話すときに自分の態度が変わるのはその相手用の「分人」があるからで、個人としての一貫性に必ずしも悩まなくていいとする新たな人間観だと紹介している。
1号さんの動画投稿頻度が下がった理由については、「自社の方針により、新規ボイスモデルのキズナアイを中心とした動画配信をしていた。初期ボイスモデルは歌を中心とした動画配信をしていた」と、新規キズナアイに相対的にリソースを割いていた旨を説明している。
一方、同日に配信された1号さんによる状況説明はやや異なる。
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