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» 2019年08月21日 07時09分 公開

NHKはどう「ぶっ壊す」べきか (2/2)

[小寺信良,ITmedia]
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NHKの強みと弱み

 元NHKの中に居たことがあるものとして、NHKはぶっ壊すべきなのか、ということに関して少し考えておくべき部分がある。すなわち、公共放送という存在に、「今」どれぐらいの意義を持たせるのか、というところだ。

 例えば先日の台風10号は、久々の大型、しかもかなりゆっくり接近ということで、国内への影響も大きかった。当然各放送局は台風のニュースをトップで取り上げるわけだが、NHKの総合テレビはこうした緊急放送時には、通常番組を吹っ飛ばしてニュース枠を拡大し、延々と災害情報を流し続けられる。

 視聴者は、いつテレビを点けても、NHKなら台風のニュースが見られる状態にあったわけだ。こうした自由度の高い編成を、その日に決定して、全国レベルですぐ実行できる強力なヒエラルキー構造を持つのが、NHKの強みである。

 台風のニュースの際に、スマホアプリの「NHK NEWS」をご覧になっただろうか。様々な切り口で台風情報が読めるほか、テレビで放送中のニュースもスマートフォンでそのままリアルタイムで(15秒ほどディレイはあったが)視聴することができた。こうした取り組みは、民放ではまだ実現できていない。

photo 多彩な切り口で台風情報が把握できる
photo テレビ放送もサイマルで視聴できた

 翌日、筆者は飛行機で移動しなければならなかったので、特に念入りにニュースをチェックする必要があったわけだが、民放やネットニュースだけではここまでリアルタイムの情報を得ることは難しかっただろう。こういう災害報道に強みがある点は、素直に評価すべきかと思う。

 一方でバラエティやドラマなど、すべてのジャンルにまたがって「民放に対しての公共放送」が必要かと言われると、そこはどうなんだろうという気がする。すでに民放に任せてもいい部分があるのではないか。

 またNHKでは宣伝になる方という理由で、ニュースの中で一般名詞化した商品名が使えないのだが、果たしてそこまでの配慮がいるのか。

 例えば「テトラポッド」なんかも使えない。「波消しブロック」と言い換えなければならないが、これはパッと聞くと防波堤のことかと思ってしまう。もはやNHKがニュースで「テトラポッド」と言ったからといって、今さらテトラポッドの宣伝になるだろうか。いるならいるし、いらないならいらないモノに過ぎない。たとえ視聴者が分かりにくくなってでも配慮すべき部分とは思えない。

 受信料問題から端を発して、見たい者だけが見るスクランブル方式に変更するべきという話になっているが、技術的には日本の放送は、もうすべてスクランブルがかかっている。みんなB-CASカードのことを忘れちゃったのだろうか。そのへんの言葉の使い方も、なんだかモヤッとする部分である。

 要するにペイパービューにするということだろう。ただそうすれば今のような巨額な受信料に支えられた全国のNHK組織や設備は維持できないだろうし、番組作りも影響を受ける。

 もちろん、税金を投入して現状を維持するなどという方法論はない。それでは国営放送になってしまい、放送が政府の支配下に入ることになる。これはさすがに憲法違反の可能性も出てくる。

 今のNHKではダメだ、それをぶっ壊すと表現するならそれでもいいが、壊し方ってものがある。ただ潰すだけでは、破壊的イノベーションは起こらない。ぶっ壊して更地にするのではなく、鎧を剥がしていってどんどん軽量化していき、その芯はなんなんだ、というところを睨んでいくというのが、まずはやるべきことだろう。

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