日本マイクロソフトは8月27日、ITを活用して公共交通や移動サービスをシームレスにつなぐ「MaaS」(Mobility as a Service)の実現を目指す企業を支援すると発表した。運輸業界だけでなく幅広い企業に対し、サービス設計に役立つリファレンスアーキテクチャ(ユースケース別にシステム構成をまとめた文書)を同日から無償提供する。「Microsoft Azure」などを活用し、他社と共同でサービスを構築するノウハウをまとめており、開発期間の短縮や、開発コストの削減に役立つとしている。
文書には主に、ユーザー認証、サービス連携、データの管理・分析など、他社と組んでモビリティサービスを行う上で必要なシステム構成を記載。Azureや「Office 365」を活用したMaaSのサンプルなども併せて収録している。
サンプルは、乗り換えアプリで検索した経路を、自動的に「Outlook」の予定表に登録し、タクシーを配車する――といった内容。顧客企業は、日本マイクロソフトの製品を活用した、ビジネスで役立つMaaSの例を学べるとしている。
リファレンスアーキテクチャの制作に当たっては、モビリティーサービスの研究・開発などを手掛けるベンチャー「MaaS Tech Japan」と提携し、共同で内容を策定した。
日本マイクロソフトはこの他、技術者向けの講座やハッカソンを開くなどし、MaaSに必要なシステムを構築できる人材を育成する。MaaSに関する新規事業開発を支援したり、MaaSへの参入を希望する企業に対し、システム開発を担うパートナー企業を紹介したりする活動も行う。
国土交通省はかねて、アプリ上であらゆる交通事業者や観光施設の検索・予約・決済ができるサービス「日本版MaaS」を実現するという目標を掲げている。
これを受け、昨今はビジネス界でMaaSの注目度が高まり、多くの企業が参入。アプリ上で交通手段の検索・予約・決済ができるサービスが始まりつつある。だが、各企業が連携する上では、ユーザー認証やデータ管理などのシステムを共通化する必要があり、開発・運用コストがかさむ例も多いという。
日本マイクロソフトは、こうした状況下で一連のサービスを提供し、MaaS企業にAzureなどを共通基盤として導入してもらい、コスト面などの課題を解決することで、国内市場でシェア拡大を図る狙いがあるとみられる。
日本マイクロソフトの清水宏之氏(MaaS&Smart Building ソリューション本部 専任部長)は、「(ビジネス界では)日本版MaaSの実現を目指す機運が高まっているが、これまではサービス開発時に参照できるモデルや設計手法が存在しなかった」と背景を説明。
「今後は各社のサービスが乱立する可能性があるが、当社は(リファレンスアーキテクチャや実装サンプル、クラウドサービスの提供を通じて)複数の企業をつなげ、国内のMaaSを発展させたい」(清水氏)と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR