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» 2019年08月30日 08時26分 公開

動画の世紀:香港で目撃した創造的デモとYouTube 過激なアカウントは取り締まれるか (1/3)

香港のデモを現地で目撃した筆者が考えた、YouTubeと規制との関係。

[小林啓倫,ITmedia]

 香港・九龍半島と香港島に挟まれた場所に位置するビクトリア・ハーバー。「百万ドルの夜景」として知られ、毎日午後8時からおよそ10分間、ビルのライトアップやサーチライトを組み合わせた光のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」が行われます。今年8月7日、私がデモ隊に遭遇したのは、そのショーを見た帰りのことでした。

 九龍半島側のウォーターフロントである尖沙咀(チムサーチョイ)地区に、香港太空館(香港スペース・ミュージアム)という施設があります。巨大な半球型のプラネタリウムが目印で、その周囲は開けた空間になっているのですが、そこに大勢の若者たちが集まろうとしていました。

 香港に来たのは人工知能に関するカンファレンスに参加するためだったのですが、もちろん香港で逃亡犯条例の改正案(香港で逮捕された容疑者の中国大陸側への引き渡しを認めるという内容で、香港の民主的な体制が脅かされるのではないかと懸念されている)をめぐって大規模な抗議活動が発生していることは理解していて、彼らがデモ隊であることはすぐに分かりました。

 ただ奇妙だったのは、多くの若者たちがレーザーポインターを持っていたこと。彼らはそのポインターで太空館の半球や、広場に生えている木をめがけてレーザーを放ち、何度もシュプレヒコールをあげていました。あとで各種報道を読んで分かったのですが、デモ隊が警察や機動隊の催涙弾に対抗するためにレーザーポインターを目くらましとして使うことが増えており、そのためにレーザーポインターを保持していた学生が「攻撃用武器の所持容疑」で逮捕されるという事件が8月6日に起きていたそうです。その抗議として、「レーザーポインターは武器になどならない(その証拠にビルや木に当てても燃えたりしない)」という行為を示すものだったというのです。

photo レーザーが飛び交う香港デモ

 不謹慎を承知で言えば、無数のレーザーが飛び交う様子はなかなか美しく、平和的でデモとはいえ若者たちの顔にも笑顔がありました。広場では音楽も流され、レスリー・チャンの「モニカ」(吉川晃司のカバー)で大合唱が起きるなど、デモと知らなければフェスか何かかと勘違いしそうなほど。実際、この様子は動画を通じて拡散されたそうで、私がいる間にも若者の数はみるみる膨れ上がっていました。

 一方で香港のデモと動画、特にYouTubeをめぐっては、不穏な動きが起きています。8月22日、YouTubeは公式ブログ上で、210のチャンネルを閉鎖したことを発表しました。理由は対象となったチャンネルが、「香港で行われている抗議活動に関する動画をアップロードする際、組織的な動きをしていることが確認された」ため。YouTubeは中国政府を名指ししていませんが、香港の抗議活動に関して、公的機関による情報操作を防ぐ狙いがあると見られています。

 香港デモをめぐる中国政府のソーシャルメディア上の活動に関しては、Twitterも8月19日に、中国政府系とみられるアカウント936件を停止したと発表しています。YouTubeはこうした他社の動きと足並みを揃えるとしており、210のチャンネル閉鎖は、その姿勢を裏付けるものといえるでしょう。

 デモ隊の側が映像を効果的に利用していることからも、政治活動における動画の力、特にインターネット時代におけるオンライン動画プラットフォームの影響力は明らかです。そもそも中国政府が関与していると見られるチャンネルが210も存在していたこと自体、その影響力を国家権力の側でも認めていることの証でしょう。政府のプロパガンダ行為を防止するという意味で、今回のYouTubeの取り組みは賛同すべきものと言えます。

 ただ210のチャンネルをどう選別したか、また具体的にどのような点を問題視したのかは明らかにされていません。同じような対応が今後も問題なく続けられるのか、という点でも懸念が残ります。

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