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» 2019年09月04日 07時00分 公開

AMラジオが終わるとき (2/2)

[小寺信良,ITmedia]
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AM放送にかかるコスト

 AM放送は受信するのは簡単だが、送信する方は大変だ。周波数が低い、すなわち波長が長いので、アンテナも相当長いものが必要となる。写真はさいたま市桜区にある、NHK新開(しびらき)ラジオ放送所のAMアンテナである。これは予備送信所で、普段は使用されておらず、久喜市の菖蒲久喜ラジオ放送所がメンテナンス等で使えないときに使用される。

photo NHK新開ラジオ放送所のAMアンテナ

 菖蒲久喜ラジオ放送所は大出力の放送所(第一放送が300kW、第二放送が500kW)だ。この写真の新開放送所は10kWしかないから、菖蒲久喜に比べれば中小規模だ。

※記事中の菖蒲久喜NHKラジオ放送所は、正しくは第一放送300kW、第二放送500kWでした。初出で2000kWとされていたのは、この敷地にできたメガソーラー発電所の出力でした。訂正し、お詫びいたします。

 つまりAM放送局はこのような巨大アンテナを、放送エリア内にバックアップも含めて最低2本は維持していく必要がある。アンテナを支えているワイヤーが見えると思うが、あの範囲も含めて全部が放送所の敷地だ。あのワイヤーに触ると感電するので、敷地内に勝手に侵入できないよう、高いフェンスで囲まれている。

 もちろん電波出力も巨大なので、凄まじい電力を食う。1つの放送局が複数の方式の放送設備を維持運用していくというのは、大変なコストがかかるわけである。比較的送信コストが安いFMに一本化すれば、放送局にとってはかなりの負担減となる。アンテナ用の広大な敷地も売却や別の活用ができるだろう。

 かつては放送局側がそれだけのコストを負担してでも、多くの人が簡単にAM波を受信できることのメリットの方が大きかったのだ。だがそうした技術的意義も、今は薄れている。

 送信設備の負担が減ることで、そのぶん放送内容が充実するのであれば、トータルで見ればいいことなのではないだろうか。筆者はそう期待しているし、ラジオ番組をFMっぽい、AMっぽいと分ける時代は終わったということだろう。

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