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» 2019年09月04日 07時00分 公開

AMラジオが終わるとき (1/2)

[小寺信良,ITmedia]

 総務省の有識者会議にて、ラジオのAM放送を終了し、FM放送への転換を可能にするよう検討が進められている。これは今年3月に、民放連が要望を出したことから検討が始まったもので、容認する方向で決まりそうだ。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年9月2日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額648円・税込)の申し込みはこちらから

 2010年にradikoがサービスを開始して以降、ラジオ放送は徐々にその存在感を高めていったように感じている。それ以前は、ラジオ放送自体がすでにメディアとしての役割を終えたのではないかという論調が強かったものだ。

 考えてみれば、2010年以降は地震、豪雨、台風など大規模な自然災害や、大きな事件事故が相次いだ。報道も速報だけではなく、その背景までを含めてじっくり解説するようなものが求められるようになった。政治、文化をじっくり語るメディアとして、ラジオ放送が少しずつ見直されているところである。

 ただそうは言っても、ラジオ放送運用コストはこれまでと同じようにかかり続ける。放送事業者として免許制度の上、責任を持ってやっているところだろうが、ついにその負担に耐えられなくなってきたというわけだろう。

 個人的にも、AMという放送方式はその役割を終えたんじゃないかと思う。AMラジオが好きだ、という人は、その放送方式が好きなわけではなく、AMラジオ文化が好きということだと思う。それがFM波でも維持されるのであれば、放送方式自体は問題ではないはずだ。

photo AMラジオ文化が華やかだった1970年代前半のソニー製ラジカセ

AM放送の技術的メリット

 AMラジオは、526.5kHzから1606.5kHzという、放送波としては低い周波数帯域を使用する。VHF、UHF帯は単位がMHzなので、1000倍単位で違うわけだ。

 FMと違ってAMは遠くまで届くと言われているが、その理由はこの周波数の低さによる。放送は送信アンテナから直接受信できれば一番いいわけだが、全ての受信機がそうそう理想的な場所に設置できるわけではない。AM波伝送の一番のメインも直接波受信ではなく、送信アンテナから大地や海面を這って伝送する、「地表波」がメインになる。

 加えてAM波では、電離層に反射する電離層反射波も使える。E層と呼ばれるイオンの層に反射するので、空からの反射波も使えるわけだ。余談だが、E層の下にはD層というのがあり、これは逆にAM波を吸収してしまう。ただD層は昼間しか出現しないので、夜の方がAM波が遠くまで届く。ダイヤル式のラジオチューナーをぐるぐる回していると、夜の方が放送がいっぱい入るのは、D層がなくなるからである。

 AM放送のもう1つのメリットは、受信機が簡単に作れるというところにもある。筆者が小学生の頃、学研の「科学」の付録だったか、鉱石ラジオのキットが付属していたことがある。今から45年ぐらい前の話であるが、当時すでにトランジスタラジオの時代であり、鉱石ラジオという技術自体はもう古いものだった。

 だが筆者の父はそのあたりの技術に明るく、うまく受信できないキットを改良して受信できるようにしてくれた。具体的にはアンテナ部に別の電線を巻き付け、それを伸ばして電灯線に巻き付けるのである。

 筆者の生家は古い屋敷だったので、まだ電灯線がむき出しで天井に貼られていた。当時、電気が各家庭に行き渡る前に建った家では電力線が壁内に埋められておらず、部屋の表面や天井を這っていたのである。

 そういう、屋敷を囲むように張り巡らされた電灯線をアンテナ代わりにして、ラジオを受信するのだ。つまりそれだけ当時の電灯線は、電波ノイズを拾っていたということであろう。戦時中に中学生だった父はそうやって、入りにくいAMラジオ放送を聞いていたのだという。

 今もなお、ゲルマニウムラジオキットはAmazonで1000円以下で買える。AM放送が停波する前に、もう1回ぐらい子どもと一緒に作ってみてもいいかもしれない。いい記念になるだろう。

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