UWBを搭載したiPhone 11はセカイカメラの夢を見るか?
Apple Special Eventで紹介されなかったiPhone 11の新機能がある。それはUltra Widebandチップの搭載だ。
iPhone 11の製品ページには「新しいApple製のU1チップは空間認識のための超広帯域テクノロジーを使います」と登場。このU1チップに組み込まれているのがUltra Widebandなのだ。10月1日以降は、これを使うと目の前にあるiPhoneに対して正確にAirDropができるのだという。
iPhone 11(および11 Proと11 Pro Max)はUWB(Ultra Wideband)という超広帯域通信に対応する。UWBは低消費電力ながら到達距離が100から200メートルと長く、誤差数10センチという正確な屋内測位を可能とする技術だ。レンジはBluetoothの限界である数十メートルをはるかに超える。この技術を用いると、他のデバイスとの位置関係を正確に把握することができる。Appleは「chip for spatial awareness」すなわち空間認識のためのチップと説明している。
iPhone 11 Proと11 Pro Maxには3つ目となる広角の「眼」が追加されたが、こちらの「眼」のほうがはるかに革新的と言えるだろう。わざわざ独自のチップまで設計してAirDrop強化だけ、ということはあるまい。
別のUWBチップ搭載デバイスからの電波が飛んでいる空間であれば、新iPhoneはその相対的な位置を正確に認識できる。これは、屋内での測位ができるということを意味する。
今回、それで思い出した技術がある。位置情報とARを組み合わせた「セカイカメラ」だ。2008年にコンセプトビデオを発表し、2009年には限定的ながらiPhoneでARを実現するアプリを公開した。そのコンセプトビデオでは、屋内にあるショップの棚にある商品の情報をオーバーレイ表示するなど、当時の技術ではできなかったことを見せていたため「ベイパーウェア」と揶揄されもした。UWBにより正確な屋内測位が可能になり、それとARKitのAR機能とが組み合わされれば、10年かけてその目指したものが実現することになる。
屋内測位に関しては、セカイカメラを開発していた頓智ドットが、ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発したPlaceEngineを採用した。PlaceEngineは複数のWi-Fiスポットの強度から現在位置を計算する技術で、高さ(階数)情報を得ることもできるため、屋内でのAR活用が期待されていたのだが、Apple純正の測位技術との競合を理由にリジェクトされたため、iOSアプリへの採用が中止されたという説がある。
Appleが提供している地図サービスでは2018年からビルやショッピングモール、地下街の店舗情報などを表示できるようになっており、駅出入口番号およびエスカレーター、エレベーターの有無が確認可能になっている。そこから屋内測位システムへの対応を見越したデータの整備を進めていたのではないだろうかと推測できる。新しいiPhoneがUWBに対応した正確な屋内測位を利用できるということになると、Appleマップと連動した屋内ナビゲーションにも期待せざるをえない。
加えて、AppleはGoogleストリートビューカーでのデータ収集に相当するApple Maps image collectionを2019年からスタートしている。そして、そのデータ収集を人力で行うというのも始めている。車では行けないところ、つまり屋内も含まれる。Appleは事業主が自分の敷地内でAppleの屋内位置測定を簡単に実施できるIndoor Survey(屋内調査)というアプリも提供している。WWDC 2019では屋内マップのデータフォーマットを公開している。ここにiBeaconのようにUWB発信デバイスを何カ所か置く動きが出てくれば、実用的な屋内ナビゲーションへの道が開ける。Appleはナビだけでなく、AR技術を使った様々な展開が可能になる。
Googleマップ、Appleマップに限らずGPSやみちびきなどの衛星測位システムは欠かせないものになっている。しかしいったんビルや地下街に入ればその恩恵が受け入れられなくなり、現在位置をロストしてしまう。iPhone 11に搭載されるUWBは自分の「場所」を空が見えないところでも常に把握できる、欠かせない技術となるのではないだろうか。
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