セカイカメラとVOCALOIDの共演が注目を集めたCEATECのライフコンテンツフロンティアコーナーで、セカイカメラの位置測位をサポートしていたのが「PlaceEngine」――。無線LANのアクセスポイントから現在地を測位するサービスで、ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発し、現在はクウジットがライセンス提供を行っている。
PlaceEngineは無線LANを搭載したPCやモバイルデバイスに対してサービスを提供しており、GPSが使えない屋内の位置測位で強みを発揮する。無線LANのアクセスポイント(AP)が発するビーコン信号からMACアドレスと電界強度を読み取り、APの位置情報をストックしたデータベースと照合することで、位置を割り出す仕組みだ。位置の推定精度はAPの密集度などにより変化し、公称では5〜100メートル。複数のAPから電波を受けられる環境では精度は増すが、逆にAPが1つしかないような場所ではおおざっぱになる。
データベースが蓄積する位置データは、基本的には同社やユーザーが“草の根”で増やしており、内容は日々更新されている。同社CEOの末吉隆彦氏によれば「位置情報の2割強がユーザーによる情報提供」だそうだ。
ユーザーがその場で位置情報を登録するとなれば、モバイル端末への対応は必至。とりわけ注目なのがiPhoneやAndroidなどのスマートフォンへの対応だろう。こうした無線LANを搭載したモバイルデバイスが徐々に普及してきたことで、「やっと環境が整ってきた」と末吉氏も期待を寄せている。現状では、ユーザーはPCやPSPの地図系ソフトなどを介して位置を登録しているが、今後、セカイカメラのようなスマートフォン向けアプリで登録が可能になれば、位置情報を提供してくれる利用者はさらに増える。それに応じて測位の精度向上や地域拡大が加速するはずだ。
セカイカメラでは現在、PlaceEngineは商用サービス向けに提供されており、ロエベでの展示や、パリのシテ科学産業博物館での展示などで活用されている。APを設置するだけで簡単に位置測位可能な空間を作り出せるPlaceEngineは、施設やイベントでの商用利用とも相性が良い。
クウジットではPlaceEngineをサービスの柱としながら、空間とリンクした総合的な情報サービスを「ロケーション・アンプ」と銘打ち、注力しているという。9月にはPlaceEngineと同社のマーカー型AR技術「KART(Koozyt AR Technology)」を使った“iPhoneによる近未来ショッピング”も実現した。今後はどんな施設で同社の技術を使ったサービスが展開されるのかにも注目したい。
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