IT基礎英語
三人称単数としての「they」、性別多様化の時代に対応
英語って不便だな、と思うことが時々ある。例えば犬の散歩で行き会った相手に「可愛いワンちゃんですね」と声をかけたい場合。英語ではまず、「He or she?(男の子? 女の子?)」という質問から始めなくてはならない。性別なんてどうでもいいのだけれど、それが分からないと会話が成り立たないのだ。
英語で人称代名詞(モノ以外)の三人称単数といえば、「he」か「she」しか存在しないというのが常識だった。けれど性別が多様化する現代、さすがにそれでは不便すぎると感じる人が増えたらしい。
Merriam-Websterの英語辞典で「they」の意味として、新しく「自分の性別をnonbinaryと認識している単一の人物」という定義が加わった。この場合のnonbinaryは、男性か女性かの二者択一では分類できない性別のこと。つまり、LGBTの人などを表す三人称単数として「they」を使う用法が定着してきたようだ。
Merriam-Websterにはこんな例文が載っている。
I knew certain things about … the person I was interviewing… They had adopted their gender-neutral name a few years ago, when they began to consciously identify as nonbinary - that is, neither male nor female. They were in their late 20s, working as an event planner. (they)
「私が面接したその人は、自分は男性でも女性でもないと認識し始めた数年前から、性別に中立的な名前を採用している。その人は20代後半で、イベントプランナーとして働いている」
さらに、このようにtheyを三人称単数として使う場合、「自分自身」を意味する再帰代名詞はthemselvesでなく「themself」を使うことも多いという。
ただし動詞の活用はtheyに合わせるらしい。例文では「They were in their late 20s」となっていて、「They was」とはしていない。新しい認識を取り入れながら昔ながらの文法にどこまで忠実になるべきか、ネイティブの人たちも苦労しているのかもしれない。
性別の記入欄で「男性・女性・その他」の選択肢が一般的になり、Facebookでは選択肢が50種類以上もあるという時代。男性か女性かの二者択一を前提とした言語は窮屈だろうなと思う。その点、日本語は、性別はもちろん、複数・単数も、女性の既婚・未婚の区別もしないんだよ、と欧米人に話したら感心された。
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ITmediaで海外情報を長年翻訳している鈴木聖子さんが、IT関連記事に登場する英文の中からよく見かける単語や気になった表現について紹介するコーナーです。
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