2020年の東京オリンピック開催が迫る中、交通機関の混雑緩和などのために政府は「テレワーク」を推進している。そんな国の動きに呼応し、日本マイクロソフトやアマゾン ジャパン、フェイスブックジャパンなどの大手IT企業はテレワークを導入済みだ。
一方で、一時はテレワークを導入していたものの、デメリットを感じて廃止したという企業もある。子育て系のWebメディアやアプリなどを運営するITベンチャーのエバーセンスだ。
同社の従業員は約40人で、男女比率はほぼ同等。子供がいる社員が多く、むしろテレワークの要望は多そうにも思える。なぜテレワークを廃止したのか、同社で人事を務める前澤宏和さんに話を聞いた。
同社がテレワークを導入したのは、創業当時の2013年。社員数は5人程度。マンションの一室がオフィスだったが、それぞれが好きな場所から好きな時間に仕事をしていた。
これは、「決められたルールを守るより、自分の意思で全てを決めたい」という創業者・牧野哲也社長の当時の考えがあったからだ。
社員同士の連絡には「Slack」を利用しているが、前澤さんは「文字だけでの連絡にはどうしても限界があった」と話す。
「それぞれに割り振られた仕事を淡々とこなしていくだけなら、テレワークしていても問題はない。だが、われわれのようなベンチャー企業では相談して意思決定しなければいけないことが日々発生する。文字ベースで連絡して返事を待つのは、時間がかかり過ぎてしまっていた」と振り返る。
テレワークをしていた当時でも「PIBO」という絵本アプリをリリースできていたが、事業はうまくいっていなかったという。このため、創業から1年半たった14年7月にテレワーク制度を止めた。
現在は午前10時〜午後2時がコアタイムで、その前後で働く4時間分の調整は社員の自由だ。
また、コアタイムに多少遅れる程度のことも許容している。子供の送り迎えなどがあると、必ず時間通りに行動できるわけではないからだ。
家族の看病が必要な場合には、在宅での勤務も認めている。海外旅行に行った友人から預かったペットの世話のために、在宅勤務を認めたこともある。
「会社の理念として、『家族を大事にしてほしい』というのがある。家族のために出勤時間を5分遅刻したことで仕事のパフォーマンスが変わるかと言ったら変わらない。また、ペットも家族。いかにペットが大事かプレゼンしてくれれば、数日程度の在宅勤務を認めることもある」(前澤さん)
完全テレワークほどの自由度ではないにせよ、このような柔軟な働き方を認めているのは「仕事の成果を出すため」(同)。
つまり、自由度が高すぎると相談や意思決定などがスムーズでなく、かといって家族の事情での遅刻や在宅勤務を全く認めないというのも、仕事のパフォーマンスに影響しかねない。
この「固すぎず、緩すぎず」というバランスを保っているのが、現在のエバーセンスの体制だ。
テレワーク制度を廃止した同社だが、実は「週4勤務・完全テレワーク」という例外的な働き方をする正社員も一人抱えている。その話を聞いて、「自分も週4・テレワークで働きたい」と同社へ面接に来る志望者が後を絶たないというが、「それを希望して面接に来る人は、大体ミスマッチだ」と前澤さんは語る。
「彼女にその条件で働いてもらっているのは、経緯があってのこと」(前澤さん)
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