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Adobe、ベネズエラの全アカウントを無効に 米政府の制裁に従い

» 2019年10月09日 09時51分 公開
[新野淳一ITmedia]

この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「アドビ、ベネズエラの全アカウントを無効にすると発表。米政府による対ベネズエラ制裁に従い」(2019年10月9日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 米Adobe Systemsは、企業や個人に関わりなくベネズエラの全Adobeアカウントが10月28日以降は無効になることを明らかにしました

 これはベネズエラに対する資産凍結などを含む経済制裁を命じた大統領令に従うための措置として行われます。

 これによりAdobeアカウントにひも付いた有償および無償のソフトウェアサービスがベネズエラで利用できなくなる見通しです。返金などの措置は行われません。

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米国大統領令による対ベネズエラ経済制裁

 ベネズエラは南米の産油国。2018年5月に行われた大統領選挙の結果、前マドゥロ大統領は勝利を宣言して再選を果たしたと主張する一方、野党指導者のグアイド国会議長は不正選挙が行われたとして大統領不在を主張、憲法の規定により自身が暫定大統領であるとしています。

 ロシアや中国はマドゥロ氏を支持。米国はマドゥロ氏の再選を認めずグアイド暫定大統領を承認し、選挙のやり直しを求めてベネズエラ政府に圧力をかけています。

 この圧力の1つとして、米国はベネズエラ政府などが米国内に所持する資産凍結を含む大統領令を8月5日付で発行しました。

 Adobeはこの大統領令に従う形で、ベネズエラの全アカウントに対する無効化を発表したわけです。

こうしたことが対岸の火事でありつづける保証はない

 米国の経済制裁によってITサービスが利用できなくなる例は今回が初めてではありません。

 今年の7月には米国による対イラン経済制裁により、GitHubはイランからの利用を突然制限しました(ただしパブリックなリポジトリは利用可能)。

 いま、こうしたことが日本ですぐに起こるようには思えませんが、米国は中国Huaweiの機器に関する利用禁止措置を同盟国にも求めてきたという例があり、これからもこうしたことが日本のIT企業にとって対岸の火事であり続ける保証はありません。

 あるいは、米国およびその同盟国とは異なる立場の国に属する企業から提供されるサービスが、政治的な都合により米国やその同盟国に対して制限される、という可能性もゼロではないように思われてきます。

 集中管理によって安価かつ便利に提供できるクラウドサービスの特徴は、一方で簡単に利用を制限できるがゆえに提供側の都合に左右されやすく、それに対して利用者はなすすべもない、という側面が徐々にクローズアップされてきています。

 これはクラウドやソフトウェアデリバリーの将来に、どのような影響を与えていくのでしょうか。

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