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「Huawei問題」の本質は何か(1/3 ページ)

» 2019年05月31日 07時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 先週はとにかく「Huawei問題」で忙殺された。Huaweiを対象として米国製品が突如禁輸された問題に絡み、スマートフォンをはじめとした多くの製品について、アメリカだけでなく日本・欧米にも影響が出始めている。

 この問題の本質はどこにあるのか? そして、どこまで影響が広がるのかをあらためて整理してみたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年5月27日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額648円・税込)の申し込みはこちらから。

安全保障で揺れる中国と米国

 Huaweiとアメリカの間での問題は、スマートフォンに関する貿易摩擦、ではない。あまりにスマートフォンの話にスポットライトがあたるため、なんとなくそう思ってしまうかもしれない。だが、事実としてはまったく異なる。

 そもそも、Huaweiはアメリカ市場でスマートフォンをほとんど売っていない。ここ数年、アメリカとの間での関係が良くなかったためだ。

 ポイントは、5Gの設備、基地局を中心とした通信インフラ事業だ。

photo Huaweiの5G関連事業

 Huaweiは通信インフラ向けの機器事業から携帯電話端末へと事業を広げてきた。その過程で2000年代より、イラン・イラク・アフガニスタン・シリア・北朝鮮などへ、アメリカや国連での経済制裁・禁輸措置などをくぐり抜け、通信インフラを輸出している、と指摘されてきた。

 特にアメリカの危機感は強く、ZTEとともに、「中国政府の意向を受け、サイバー攻撃やスパイ行為に加担している」と非難されてきた。アメリカの政府調達品からの排除や、大手企業に対して不採用の圧力をかけるなど、明確な敵対姿勢が見られた。アメリカ企業の関係者から、「Huaweiの製品は採用しない」という話を聞いたのは一度や二度ではない。そうした話は、技術系のところよりもそうでない部門で目立つような印象すらあった。

 当然、そうした動きは日本政府にも影響を与える。昨年12月には、政府与党関係者から「Huaweiのスマホを分解したら余計なものが見つかった」というコメントが得られた、という報道があり、話題になった

 結局、直接的に「日本国内のインフラからHuawei製品を排除する」という命令は下っていないものの、通信関連各社にはそういう「忖度」を求める圧力があるのも事実である。

 例えば、この夏にNTTドコモが発売するモバイルルータはシャープ製だ。従来、モバイルルーターといえば中国系のメーカーが担当しており、Huaweiはその大手なのだが、「米国系企業を含め、企業案件で、Huawei製ルータでは調達を渋るところが出始めた」(通信業界関係者)ことから、今回はシャープにルータの開発・製造を委託している。その時期は当然、今回の騒動よりはずっと前なのだけれど、やはり日本にも影響は出ていたのだ。

photo HuaweiのサイトにはNTTドコモと5Gで協力しているビデオが掲載されている
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