ITmedia NEWS > STUDIO >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

いま知っておきたいAI活用事例――内定辞退予測、退職予測から、RPA連携の可能性までよくわかる人工知能の基礎知識(2/3 ページ)

» 2019年11月06日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 まず、リクルートキャリアの側で、自社が持つ過去の学生のプロフィールと、彼らのリクナビや関連サイト上での行動、就職活動の結果などの膨大なデータを分析し、学生たちがどのような進路を選んでいるかのパターンを把握しておく。同社は顧客企業から、応募者の個人情報(大学・学部・氏名)を提供してもらい、リクナビが保有する情報や行動データ、分析で得られた内定辞退のパターンを組み合わせて、内定辞退率をはじき出していた。

 人事分野におけるAI活用では、退職予測の事例も多い。AIを活用して「もうすぐ辞めそうな社員」を把握することで、彼らを辞めないよう説得したり、待遇改善に動いたりするわけだ。

 その先駆けとなった米HP(ヒューレット・パッカード)では、2010年代初めからフライト(逃亡)リスク分析を行っている。これは勤務評価や昇進・昇給の状況といったデータを基に、離職リスクを数値化するというもの。リスクが高い社員と面談したりすることで、推定3億ドルものコスト削減効果があったといわれている。

 人材大手のパーソルホールディングスや、医療・福祉関連企業のソラストも同様の取り組みをしている。ソラストは入社1年以内に退職しそうな社員を把握するシステムを開発。社員が記入する面談シートの文章をAIが分析し、過去の文章データと比較することで、退職のリスクを数値化している。最近では日本オラクルが提供する「HCM Cloud」のように、離職予測機能を備えた人事管理サービスも増えてきた。

 AIによる予測は、今後ますます身近なものになっていくだろう。

作業を肩代わりするAI RPA連携の可能性

 次はAIによる自動化だ。あらゆるITシステムは、人間の作業を何らかの形で代替するものだが、AIを使うことでより複雑な作業を広範囲に行えるようになった。

 日本企業が大きな注目を寄せているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とAIの連携もトレンドになっている。RPAは、PCを使った定型業務を自動化するツール。例えば「AI-OCR」機能と連携すれば、PDFのデータから手書き文字を認識し、Excelに自動で転記する――といった使い方ができる。

 RPAとAIを連携させた一例として、英国の労働年金省(DWP)の取り組みを紹介しよう。DWPは福祉と年金を管轄する行政機関で、年間2000万人の市民に対し、約1770億ポンド(約24兆円)もの福祉給付金を給付する、英国最大級の政府部門である。そのため業務の効率化が必要不可欠で、この1年半の間に1000人ものITスタッフを雇って業務のデジタル化と自動化を進めている。

 その一環でRPAを導入し、給付金申請と審査業務を自動化。パイロットプロジェクトでは、年間数百万ポンドものコスト削減が見込めるという結論に達したそうだ。

 この成功を受け、DWPは給付金申請の内容を審査するAIの開発に取り組んでいる。既にトライアルを行っており、16台のソフトウェア・ロボットが申請者とコミュニケーションしているという。DWPは、人間の介入なしに自律的にタスクを実行できるシステムを目指しているそうだ。それによって、人間のスタッフはサポートを必要とする人々の対応ができるようになるからだ。

 AIによる自動化の例はまだある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.