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メルカリの19年度1Q、最終赤字71億円 メルペイと米国事業への投資かさむ 「計画通りの数字、危機的状況ではない」(1/2 ページ)

» 2019年11月07日 18時30分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 メルカリが11月7日に発表した2020年6月期第1四半期(19年7〜9月)の連結業績は、売上高が前年同期比37.9%増の145億4800万円、営業損益が70億1000万円の赤字(前年同期は25億1300万円の赤字)、最終損益は71億1300万円の赤字(28億8700万円の赤字)と増収減益だった。フリマアプリ「メルカリ」の国内事業は黒字だったが、米国事業とモバイル決済サービス「メルペイ」の広告宣伝費への投資額がかさんだことが響いた。

photo メルカリの長澤啓執行役員CFO

「プランニングされた数字、危機的状況ではない」

 決算会見に登壇したメルカリの長澤啓執行役員CFO(最高財務責任者)は、業績について「プランニングされた数字だ。国内メルカリ事業が赤字であれば問題だが、利益を生み出せている。投資は意図を持ったもので、やめれば赤字ではなくなる。資金調達も行っており、バランスシートを見ても危機的状況ではない」とコメント。

 「70億円の損失は非常に大きいが、未来(の業績)はこういう状況ではなくなる。今は投資によってリターンが得られると判断している」と語った。

出品者の獲得策によって国内GMVはやや苦戦

 国内メルカリ事業の第1四半期のGMV(流通総額)は、前年同期比28.1%増の1268億円、MAU(月間アクティブユーザー数)は28.0%増の1450万人に拡大した。ただ、直近の四半期と比較すると、GMVは2期連続で減少中。19年6月期第3四半期(1〜3月)の1330億円、第4四半期(4〜6月)の1292億円から低下した。

 この理由について、長澤CFOは「以前はユーザーの購入を促進する施策を打っていたが、昨今は中長期的な成長を考慮し、出品するユーザーを増やす(広告などの)施策を重視している。商品の在庫がなくなることを防ぎ、(需要と供給の)バランスをとる狙いがある。そのためGMVの成長率が若干スローダウンしている」と説明した。

 また、メルカリで多く取引されるアパレル類は、夏物よりも冬物の方が単価が高い傾向にあり、その影響でGMVも冬に伸びて夏に停滞するケースが多いといい、長澤CFOは「過去のデータでも4Q〜1Qは弱く、厳しいシーズンだった」と振り返った。

photo 国内メルカリ事業のGMV・MAUの推移

米国事業は成長も、目標の「月間GMV1億ドル」にはまだ届かず

 米国事業の第1四半期のGMVは、前年同期比52.0%増の1億900万ドル(約119億円)。前四半期から9%伸びた。長澤CFOは「規律ある成長を継続している。配送の選択肢を増やしたことで、限界利益率は前年同期から1.5倍に改善した」と強調した。

 ただ米国事業のGMVは、メルカリが目標に掲げる月間1億ドル(約109億円)には届かず。長澤CFOは「1億ドルという目標は、黒字化できるラインとして設定した。成長ペースを考慮するとチャレンジングな目標であることは理解しているが、現在は限界利益率が上昇しており、そこに満たずとも収益化が見え始めている」と語った。今後はユーザーの購入頻度向上や維持に向けた施策を展開していくという。

photo 米国事業での主な取り組み

メルペイは「メルカリとのシナジー出す」

 メルぺイの利用者数は9月に400万人を突破し、10月には500万人を超えた。継続率は約8割、決済に対応する加盟店は170万カ所、口座連携が可能な金融機関は100社に上るという。長澤CFOは「メルペイは、メルカリとのシナジーをきちんと出せている。中でも『メルペイあと払い』ユーザーのGMVは、一般ユーザーよりも10%ほど高い」と状況を説明した。

 一方、競合するソフトバンク傘下のモバイル決済サービス「PayPay」の累計利用者数は1900万人を突破し、同社の宮内謙社長は5日の決算会見で「1人勝ち状態」だと強調していた。この発言について、長澤CFOは「PayPayは(ユーザー増に向けて)非常に大きな投資をしているが、当社はメルカリとのシナジーを出すための投資をしている。当社の企業体力では、この方が費用対効果が高い」と説明。

 「規模感ではPayPayの一人勝ちかもしれないが、われわれなりの勝ち筋を描いている。中国市場ではWeChat PayやAlipayなど2〜3社が勝ち残っている。日本でも(同じような状況になった場合は)その中の1社に入りたい」とした。

photo メルペイ事業の計画。収益化はまだ先という
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