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ディープラーニングに向くのは「100点を取らなくていい現場」 東大・松尾研発のVC代表が語る“AIの狙い目”(1/2 ページ)

» 2019年11月14日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 「ディープラーニングに向いているのは、100点を取らなくていい現場。大事だけれどクリティカルじゃない領域がいいんです」――こう話すのは、東京大学・松尾豊研究室発のベンチャーキャピタル・Deep30代表の田添聡士さんだ。Deep30は、ディープラーニング技術を開発・提供する企業に特化して投資するファンド。調理ロボットを開発するコネクテッドロボティクスや、「GAN」(Generative Adversarial Network:敵対的生成ネットワーク)で架空のアイドルの顔画像を自動生成する技術を開発したデータグリッドなどに投資している。

東京大学・松尾豊研究室発のベンチャーキャピタル・Deep30代表の田添聡士さん

 さまざまなベンチャーに投資する中で、ディープラーニングでビジネスインパクトが出せそうな領域が分かってきたという。ベンチャーキャピタルとして、日本のAI業界の現状をどう見ているのか。投資家視点で見る企業の評価ポイントや、ディープラーニングの可能性などを聞いた。

「業界特化」で差別化できる

 田添代表は「日本でもAIがシュアなもの(信頼できる確かなもの)として認知されてきたと思います」と話す。さまざまなAIベンチャーが設立される中で、投資の判断はどのように行っているのか。

 「業界特化のビジネスであるかは、気にします。日本企業は良くも悪くもゼネラルに何でもやろうとしますが、そういう企業は海外ではあまり評価されていない印象です」と田添代表。投資先としては、調理ロボット開発のコネクテッドロボティクスや、リーガルテックの領域に特化したリセなどがこれに当たる。最近では、アクチュエータやロボティクスなど、海外でも高い評価を受ける技術を持つ企業への投資を検討しているという。

 投資会社としては、当然ビジネスインパクトを重視する。田添代表は「インターネットの世界は、何もない所から新しいものが出てきてそれが世の中のスタンダードになっていくことがありますが、AIは既に商いが成り立っている領域に入っていくものです。ですので、AIを使ってもらうためには、顧客に対してビジネスインパクトを説明できないといけません」と指摘する。

 田添代表によると、AIベンチャーは技術力に長けているだけではダメで、顧客のビジネスを深く理解し、ニーズに応じてサービスやシステムを設計する必要がある。アルゴリズムやデータセットなどはオープンな場で公開されていることも多いため、業界ごとの深いドメイン知識が差別化のポイントになってくるという。

 「例えば、工場でSaaSサービスを導入してもらうとして、料金形態について『サブスクリプションです』といっても通じないことがあります。減価償却の考えがあるので、『それよりも3年分一括で払いたい』と言われてしまうんですね。そのため、管理・保守・運用代金と言い換えてみたりします。同じことでも伝え方で相手の印象は変わります。そういった細かいディテールを100個、200個と積み重ねていくことが大切です」(田添代表)

 「技術力でいうと、日本ではPreferred Networksの一強でしょう。しかし、ビジネス視点で見るとまだまだ日本のAI業界は粗い状況で、誰も勝ちパターンを示せていないと思っています」(同)

 そんな混沌(こんとん)とした中でも、ディープラーニングと相性が良い領域が見えてきたという。

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