冒頭で紹介した通り、田添代表は「ディープラーニングに向いているのは、100点を取らなくていい現場です」と指摘する。その現場とは、ある程度経験のある職人の目が必要だが、そこそこの水準を保てていれば問題なさそうな領域――とも言い換えられる。
田添代表は「われわれの投資先ではないのですが」と笑いながら、AIベンチャーのRidge-iが公開している、ごみ焼却施設におけるAI活用事例を紹介する。同社は荏原環境プラントと共同で、AIでごみを画像認識する仕組みを開発。ごみを効率的に焼却するには、クレーンを操作して適度にごみをかき混ぜたり、燃えにくいごみを除外したりする必要がある。これまでは熟練作業員がクレーンを操作していたが、ディープラーニングによる画像認識と高度制御装置によるクレーンの自動操作によって、これらの作業の多くを自動化できたという。
「ごみの投入やかくはんのクレーン操作に、100点の答えはありませんよね。何か問題が起きても、人が介入してカバーすれば間に合います。そうしたビジネス的に大事だけれど細かなミスがクリティカルではない領域は、AIで代替する価値があるでしょう」(田添代表)
「一方で、食やクルマ、医療など人に直接関係していくる領域は、ちょっとしたミスが致命的な問題になるので、参入するハードルも高いといえます」(同)
ディープラーニングによる画像認識は、食品工場の製造ラインにおける原材料の不良検知などでもよく使われている。田添代表は、工場関係の事例は今後ますます増えていくだろうと予想する。
「工場の検品作業について、日本では人手不足が、海外では品質を保てないことがそれぞれボトルネックになっています。社会的に解決する意味のある領域はディープラーニングが入り込みやすいです。人間の作業をそのまま代替するだけでは費用対効果はたかがしれているので、そこからどれだけ付加価値を付けられるかでしょう」
自身もコンサルタント出身である田添代表は、「技術だけでなくビジネス全体を考えられる、コンサルタントのような人材の需要はとても高いです」と話す。技術に長けているベンチャーは数多くあるが、両方を兼ね備えた人材は日本にはなかなかいないという。
「ディープラーニングの全体像は、正直な所まだ分かりません。私たちもダメだと思う所には投資しませんが、よく分からないものはいったん保留して納得いくまで考えます。ディープラーニングが今後コアな技術になるのは間違いないでしょう」
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