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ヤフーとLINE、統合の裏に「GAFAに負けっぱなし」への危機感 世界で勝つ戦略とは?(2/2 ページ)

» 2019年11月19日 05時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]
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サービスの相互補完で“スーパーアプリ”目指す

 顧客層だけでなく、サービスの相互補完も狙いの1つだ。「ヤフーはメッセンジャーを提供できていない。LINEはそこまでECに力を入れていない。両社が組むと、株主も含めた大きなグループシナジーをもたらせる」と川邊社長は強調した。将来的には、1つのアプリ上でメッセンジャー、コマース、決済、保険など、生活に関するあらゆるサービスを提供できる“スーパーアプリ”の開発を目指すという。

 会見では詳細は明かさなかったが、現在ヤフーがEC事業で展開している「ソフトバンクユーザーはポイント10倍」といったキャンペーンを、LINEユーザーに適用する可能性もあるという。

 「現在は使い勝手が分断されているため、シームレスなユーザー体験を届けたい。『両社が一緒になるからには、今までできなかった大きな課題解決につながらないと意味がない』と孫さん(孫正義氏)からも助言を受けた」(川邊社長)

photo 経営統合のスケジュール

 スーパーアプリによって収集した、顧客のさまざまなデータを分析し、さらなるサービスの充実につなげる上で、欠かせないのがAIだ。LINEは以前から親会社の韓国NAVERと「Clova」を共同開発していたが、今後も開発に投資し、サービスの中核として活用できるAIの開発を目指す。

 出澤社長は「投資額は両社併せて年間1000億円。これまで以上の規模で、今後も大胆に行っていく。検索やコマース、メッセンジャーを組み合わせ、一人一人に合ったサービス・情報を提供できるのではないか」と自信を見せた。

両社で花嫁武者修行

 そんな両社長は統合後、新生ZHDの「代表取締役Co-CEO」として共に代表権を持つ(社長は現任の川邊氏が続投)。新生ZHDの社内取締役は、現行のZHDとLINEが3人ずつ派遣する。独立社外取締役は4人の予定で、現在は候補者と交渉中という。

 サービスの方向性については、新生ZHD内に新設する「プロダクト委員会」で議論する予定。LINEの慎ジュンホ代表取締役が新生ZHDのCPO(最高プロダクト責任者)に就き、最終的な意思決定を行う。

photo 川邊・出澤両氏が「代表取締役Co-CEO」を務める

 新生ZHDの経営では「両社は対等な関係を維持する」(川邊社長)といい、2人の代表取締役を置く新体制では「(出澤社長と)腹を割って、全く同じ役割で、全く同じコミット度合いで取り組む」(同)というが、統合までの1年弱はあくまで競合として真っ向勝負し、切磋琢磨する中で成長を目指すという。

 川邊社長と出澤社長はそれぞれ、「ヤフーの社員には『思いっきりLINEと戦え、いいサービスを作れるか勝負をしろ』と言った。殴り合いながらチームワークを準備する。両社で花嫁武者修行をするようなものだ」「私もLINEの社員に同じことを話した。お互いに良いサービスを作り、成長した形で合流したい」と意気込みを語った。

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