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東大特任准教授、問題発言で大学側から「遺憾の意」 講座提供元のマネックスも寄付停止の事態に発展

» 2019年11月25日 13時54分 公開
[井上輝一ITmedia]

 東京大学の特任准教授の発言をめぐって、大学側や関連企業が声明を発表する事態が起きている。東京大学大学院情報学環・学際情報学府は11月24日、「職員による特定個人や特定の国、その国の人々に関する不適切な書き込みがあった」として、「大変遺憾に思うとともに、それにより不快に感じられた皆さまに深くおわび申し上げる」と発表した。

東京大学が11月24日に発表した見解

 問題発言をしたのは、大澤昇平特任准教授。「自社では中国人は採用しない」など国籍による差別と取られる発言をTwitter上で行い、波紋が広がっていた。

 これに対し東大は、「これらの書き込みは個人または兼務先組織に関するもので大学の活動とは一切関係がない」と関係性を否定した上で「大学の理念にのっとり、国籍はもとより、あらゆる形態の差別や不寛容を許さず、全ての人に開かれた組織であることを保障する」と大学側の考えを明らかにした。

 また、大澤特任准教授が持つ講座「情報経済AIソリューション」に寄付をしていたマネックスグループは東大の声明に続き、「本特任准教授の価値観は到底受け入れられるものではなく、書き込みの内容や現在の状況に関して極めて遺憾。今後、本講座に対する寄付は速やかに停止する方針だ」と発表した。

東大の発表に続き、マネックスグループも見解を表明

 同大の伊東乾准教授は、「当該青年の雇用は有期の寄付講座で、期限が来れば(職位は)自動消滅」「スポンサーからの寄付講座の停止は職位の消滅を意味する」とTwitterで言及。

 一方、同大の玉井克哉教授は、寄付講座への寄付元企業の影響について懸念を示す。「いったんコミットしたならば、担当教員の業績が少ないとか言動が気に入らないといった理由で寄付を打ち切ることはしないことになっている。任期が保障されなければ学問研究の自由が成立しないので、それが(寄付講座の)前提となる」と、寄付講座の制度設計を説明。

 「今回の件は、特定の特任教員がトンデモな言動を繰り返したため寄付の打ち切りを決めたということのようだが、制度設計から外れた事態であって、残念というしかない」(玉井教授)

 東大は、「当該寄付講座はマネックスグループの他にも数社からの寄付がある。存続については現在未定」とITmedia NEWSの取材に答えた。

 大澤特任准教授の発言をめぐっては、国籍差別発言以前から、フィッシング詐欺対策の同氏による解説について複数のセキュリティエンジニアから異論が出ていた他、ファイル共有ソフト「Winny」の作者・金子勇氏について「犯罪者」「無罪判決は国家の陰謀」「私が関係筋から聞いた話によると、Winny開発には中国共産党が関与している」などと同氏が発言したことも問題視されていた。玉井教授は「最高裁まで闘って無罪を得た故金子勇氏を『犯罪者』とののしる心ない投稿」と憤りを見せていた。

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