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更新が途絶えたSNSアカウントは無価値じゃない 死者の“生きた証”に私たちはどう向き合うべきかTwitter休眠アカウント問題で考える(1/3 ページ)

» 2019年11月28日 07時00分 公開
[古田雄介ITmedia]

 「Twitter、休眠アカウント削除へ」──このニュースを目にしたとき、最初に浮かんだのは「運営は何を焦っているのだろう?」という疑問だった。

 既報の通り、米Twitterは休眠アカウントに対して、12月11日までにログインがない場合はアカウントを削除するという方針を明らかにした。

追記:

(11月28日 午前9時):やはり、故人アカウントの問題から、Twitterはアカウント削除を一旦ストップするようだ。28日未明に撤回を表明するツイートを発信した。


 休眠アカウントというのは、同社のポリシーに照らし合わせると「少なくとも6カ月ごとにログインして、ツイートしていないアカウント」ということになる。この状態になると「アカウントが恒久的に削除される場合」があるとは兼ねてから伝えられていたが、本腰を入れて削除に乗り出す姿勢をみせたのは初めてのことように思う。

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 しかし、メディアに報じられたのが11月26日で、アカウント削除のリミットが2週間後というのはいささか猶予が短すぎる。12月11日を過ぎたからといって一斉に削除するわけではないとのことだが、1週間程度の揺らぎしかないのか、それとも半年や数年スパンのことなのか。あるいは、条件に該当するアカウントを軒並み処理するのか、数割程度に留めるのか。想定している具体的なスタンスは明らかにされていない。

追記:

(11月28日 午前9時):Twitterが27日未明に投稿したツイートの中で、アカウント削除についての考え方を明らかにした。


 一企業のサービスとはいえ、膨大なユーザーを抱えている場合は個人情報の保護や公正で安全な情報発信の監督といった社会的な責任を求める風潮が世界規模で高まっているから、休眠アカウントという、働きかけようのない存在を抱えるリスクが高まっていることは分かる。休眠アカウントを削除する仕組みや人的資材を投入するよりも、放置しておいたほうがコストもリスクもうんと低かったひと昔前とは、時代が変わってきているのだろう。

 ただ、休眠アカウント全てをひとまとめにして扱う、十把一絡げの状態では大きなリスクを生むはずだ。

休眠アカウントをひと括りに扱おうとするリスク

 役割を終えて誰にも見向きもされない“捨てアカ”のようなアカウントと、“追悼の拠点”となっている故人のアカウントを、「半年以上ログインしていない」という条件のもとに同じごみ箱に入れて、何のチェックもなく最終処分場に持っていくというのはどうにも乱暴だ。ユーザーの反発を招くのは避けられないのではないか。

 SNSのアカウントは更新が途絶えているから無価値(あるいはマイナス価値)になるわけではない。亡くなった人──物故者のアカウントだけでなく、過去のプロジェクトの公式アカウントもそう。アカウント抹消という不可逆的な処理を施すよりも前にできることはあると思う。

故人は過去にとどまる しかし、インターネットは“今”を更新し続ける

 休眠アカウントを保持し続けるリスクは確かにある。内容をかみ砕きながら、故人のSNSアカウントやブログ、Webサイトにスポットを当てて考えてみたい。

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