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» 2019年11月29日 07時00分 公開

これからのAIの話をしよう(産業政策編):「まずは正しく失敗したい」 経産省が“AI人材育成”に挑戦する理由 (2/4)

[松本健太郎,ITmedia]

小泉氏:人材育成は、国が進めるAI戦略の“一丁目一番地”だからです。経済産業省はこれまで、民間事業者が行うAI・データサイエンス分野などの専門的・実践的な教育プログラムを経済産業大臣が認定する「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」(※)の創設などを行ってきました。今回はこれまでとは違い、経済産業省主導で育成手法自体に真正面から取り組みます。

 産業競争力の点で考えると、いかに多くの人材を育成するかは喫緊の課題です。文部科学省が教育改革に取り組む一方で、その教育を受けた人が社会に出るまでどうするのかという、現実的な課題が出てきます。

※:経済産業大臣が認定した教育訓練講座のうち、厚生労働省が定める一定の要件を満たし、厚生労働大臣の指定を受けたものは、「専門実践教育訓練給付」の対象になる。一定の要件を満たした人は、講座受講料の最大70%(上限あり)が支給される

「AI Quest」の位置付け。経済産業省より

マスクド:文部科学省と経済産業省の役割分担については、私も気になっていました。

小泉氏:経済産業省は、産業政策を担っています。これまで「2025年の崖」(DXレポート)、「コネクテッドインダストリーズ」などを打ち出しましたが、これらに共通しているのが人材の重要性です(※)。産業界が必要としている人材は万単位で不足しています。これらを産業界と連携して育成を考えていきたいと考えています。

※:DXレポートの中で指摘された「2025年の崖」は、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの遅れに警鐘を鳴らすもの。レガシーシステムを使い続けると、「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」としている

マスクド:つまり、産業政策として人材育成に取り組んでいると。AI Questはフランスの「42」をモデルにしたそうですが、それはなぜでしょうか(※)。

※:「42」では授業はなく、ゲーミフィケーションを取り入れた自主学習の実践型プログラムを実施。ケーススタディを通して生徒同士で競い合い、教え合うという

小泉氏:不足しているAI人材は100人や200人ではありません。座学だけでは実践的な内容を学ぶのは難しいですし、かといって講師が教える形だと教えられる人数に限界があります。講師になれるような最先端の知恵を持っている人は現場におり、育成に時間を割けないという問題もあります。

マスクド:まさに、そうですね。

小泉氏:私は前職のリクルートで「ケイコとマナブ」という事業に携わっており、スクール事業にも関わった経験があります。人数関係なく教育効果をゴールにするなら、対面の形式が良いに決まっています。しかし、大人数を育成したいなら多くの講師が必要になる。一方で、オンライン授業は人数を増やせるけれど、対面ほどの効果は得にくいでしょう。

 われわれが狙いたいのは、その間です。実践的な内容ながら、講師が関与しなくても授業が回るような、拡大生産性のある手法をとります。MBA(経営学修士)を取得できるビジネススクールが実践しているように、AI実装のケーススタディとデータセットを通して疑似経験させることで、実際にAIを実装するプロジェクトに関わらなければ経験できないことを学べると考えています。この方法を政策として実証実験しているのが、AI Questです。

マスクド:そういう背景でしたか。では、その事業が成功すると、その後はどうなるのでしょうか。

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