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「まずは正しく失敗したい」 経産省が“AI人材育成”に挑戦する理由これからのAIの話をしよう(産業政策編)(1/4 ページ)

» 2019年11月29日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 日本では、AIやデータを活用してビジネス課題を解決できる“AI人材”の不足が問題になっています。

 そんな中、4月に開催されたAIサミット「AI/SUM 2019」で世耕弘成経済産業大臣(当時)が、AI人材育成の政策「AI Quest」を経産省主導で行うことを明らかにしました。

 これは、AI人材不足の解決を目的にした事業です。企業の実例を基にしたケーススタディを用意し、受講者がオンライン学習やオフライン学習を通してAIを社会実装する力を身に付けられるよう支援します。

 AI Questは、フランスにある学費無料のエンジニア養成学校「42」を参考にしているそうです。「42」は、教員約10人で年間1000人のIT人材を育成しており、受講者の就職率はほぼ100%だといいます。日本でも、DMM.comが「42」の東京支部「42 Tokyo」を六本木に設立し、話題になりました。

 AI Questの実証事業は10月に始まり、AI・データサイエンスの知見を持つ学生と社会人約200人が参加しているそうです。

 そもそも、なぜ経済産業省がAI人材育成の実証事業を手掛けるのでしょうか。政府は25年までに、データサイエンス・AIを理解し、各専門分野で応用できる人材を年間25万人育てることなどを目標に掲げています。それはどこまで現実味のある目標なのでしょうか。

 こうした疑問を、AI Questの旗振り役である経済産業省の小泉誠課長補佐(商務情報政策局 情報経済課)に聞きました。小泉課長補佐は、前職のリクルートでは新規事業開発などに携わっており、多くのサービスやアプリケーションの立ち上げを担当した経験があります。「官民一体で大きなうねりを作りたい」と語った小泉課長補佐の真意とは。

 聞き手は、AIベンチャーの現状や企業のAI活用について詳しいマスクド・アナライズさん。

左からマスクド・アナライズさん、経済産業省の小泉誠課長補佐(商務情報政策局 情報経済課)

連載:これからのAIの話をしよう

いま話題のAI(人工知能)には何ができて、私たちの生活に一体どのような影響をもたらすのか。AI研究からビジネス活用まで、さまざまな分野の専門家たちにAIを取り巻く現状を聞いていく。

(編集:ITmedia村上)

なぜ、経産省がAI人材育成?

マスクド:今日はAI Questの話を聞きにきました。国が、しかも経済産業省が、AI人材の育成に乗り出す意味が分からないんです。

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