NTTデータ傘下の日本電子計算が提供する自治体向けIaaS「Jip-Base」で障害が発生し、全国53の自治体と団体のシステムに影響が出ている件で、同社は12月16日に記者会見を開いて謝罪し、「33の自治体で、一部のデータが復旧できない状態にある」と明らかにした。問題発生から2週間がたとうとする中、いまだ全面復旧の見通しは立っていない。
Jip-Baseは、各自治体向けに業務システムを提供するクラウドサービス。障害は4日午前11時ごろから53の自治体や団体で発生。東京都や愛知県など一部の自治体では、税務処理や戸籍管理のシステムが使えない状態になった。
日本電子計算は、障害の原因はストレージを制御するファームウェアの不具合だとしている。この不具合を受け、ストレージの保守を担当するEMCジャパンは5日にファームウェアのアップデートを実行。ファームウェアの不具合によるハードウェアの故障は6日に解消したが、その後の動作確認により、不具合の影響でストレージの一部が正しく読み出せない状態になっていることが分かった。
ストレージが読み出せないと、各業務システムを動かす仮想OSの起動や業務データへのアクセスが難しく、9日中の全面復旧は不可能だと判断した。
日本電子計算は9日以降、ストレージやバックアップデータから仮想OSの情報や業務データの復旧作業を行っている。同社の山田英司社長は、16日の段階で「(仮想OSのうち)70%はIaaSとして復旧したが、15%は復旧不可能な状態にある」と明かす。残りの15%は、現在もバックデータからデータが復旧できるか確認している段階だという。
15%(約200個)の仮想OSが復旧できない状態にあるのは、日本電子計算によるバックアップが正常に行われていなかったからだという。一部でバックアップが正常に行われていなかった理由について、Jip-Baseを統括する神尾拓朗部長(公共事業部基盤サービス統括部)は「監視システムに不具合があったため」と、ストレージのファームウェアとは別に原因があったことを明かした。
これにより、33の自治体で今も一部のデータが復旧できていない。これらの仮想OSについては復旧を諦めず、利用事業者と連携してできる限り復旧作業を行うとした。
山田社長は、ストレージを制御するファームウェアの不具合が起きたのは「EMCジャパンから修正パッチの情報が届いていなかった」からだと説明する。
日本電子計算とEMCジャパンは、EMCジャパンからファームウェアの修正パッチがリリースされた場合に、メールでパッチの情報を通知するよう契約を結んでいた。しかし、今回の障害を事前に回避できたと考えられる修正パッチのリリース情報は、4日の段階では届いていなかったという。
一方で神尾部長は「5日にEMCジャパンから修正パッチの情報が提供されたが、緊急度が低いものとされており、事前に見たとしてもパッチを適用していなかった可能性はある」としている。
日本電子計算は、今回の障害に関して今後も被害状況の調査やデータ復旧を行うとしており、被害を受けた団体への補償などは現在検討中だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR