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粘着力でフィードバックする触覚ディスプレイは、納豆も再現可能? 阪大と東北大の「StickyTouch」Innovative Tech

» 2019年12月18日 09時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 大阪大学と東北大学の研究チームが11月に発表した触覚ディスプレイ「StickyTouch」は、表面の粘着力を動的に変化させることでフィードバックを行うものだ。同研究は、SIGGRAPH Asia 2019において、Best Demo Voted by Committeeを受賞した。

photo StickyTouchプロトタイプ

 表面の粘着力を局所的に変化させ、ユーザーに触覚フィードバックを与えるシステム。温度により粘着力が変化する「感温性粘着シート」を用いて、粘着の強度を制御する。

 プロトタイプには、ペルチェ素子を使用している。ペルチェ素子とは、2種類の金属の接合部に直流電流を流すと、上面で冷却し、下面で加熱する電子部品。直流電流の向きを変えると冷却面と加熱面が入れ替わることから、高精度の温度管理ができる。

 このペルチェ素子と基板を使用したモジュールを作成し、グリッドパターンに配置。モジュールを8×8マトリックスで感温性粘着シートの下に設置し、ステンレス鋼プレートをモジュールと感温性粘着シートの間に配置する。これによって150×150ミリの接着可変表面を構築する。

photo 実装されたStickyTouchの中身

 各モジュールは個別に制御が可能で、セ氏30〜50度の範囲で制御する。境界温度(40度前後)付近を制御することにより、接着力を動的に変更できる。操作はPCで行い、任意に選択した配置に基づいて、表面の特定部分を接着領域に変更する。

photo StickyTouchのシステム概要図

 プロトタイプは、モニターと重ねることも可能だ。応用例として、納豆を表示して、その部分だけ粘着し質感を提示したり、粘着でスワイプしている指を止めることでどの部分を見ればよいのかを粘着で伝えたりできる。VR(仮想現実)と組み合わせた粘着体験も考えられる。

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