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「日本の英語学習は非効率」 アイスランド人が日本向け英語学習システムを作ったワケこれからのAIの話をしよう(教育編)(2/3 ページ)

» 2019年12月24日 07時00分 公開
[周藤瞳美ITmedia]

「日本の語学学習が非効率で驚いた」

 コーリジャパンは、2010年にアイスランドで設立されたCoooriの日本法人として、15年に立ち上がった。イェンソンCTOはアイスランド出身で、東京工業大学大学院 情報理工学研究科で自然言語処理と音声認識の博士号を取得した経歴を持つ。英語、ドイツ語、デンマーク語、日本語を習得するなど語学学習の経験も豊富だ。起業のきっかけは、「日本はテクノロジーが発達しているにもかかわらず、言語の学習においてはテクノロジーを使わない非効率なやり方が続いていることに驚いた」ことだった。

 会社設立当初は外国人向けに日本語学習教材を開発していたが、B2C市場に限界を感じて15年に方針転換。日本人の語学学習をテクノロジーの力で支援したいという思いを実現するため、TOEICに特化したB2Bビジネスに参入した。導入企業には、日本航空、三菱UFJ銀行、第一生命保険などの大手企業が名を連ねる。

 coooriではどのようにAIを活用しているのか。利用するには、まずTOIECの目標点に合わせて自分に合ったコースを選び、診断テストを受ける必要がある。

利用イメージ

 AIが分析する診断テストの結果を基に、1日15分×3回の学習時間を目安に半年間の英語学習に取り組む。さらに学習を進めていく中で、個人の習熟度や学習能力などをAIが解析することで、ユーザーが忘れはじめた単語を優先的に出題するなどの最適化をしてくれるようになるという。

ビジネスパーソンが興味を持ちそうな話題を読み解く

 このシステムの肝となるのは、開発に10年を費やしたという独自AI「3O」(スリーオー)だ。19年10月時点で7万時間以上の日本人の英語学習データを蓄積しており、日本人の英語学習者の傾向や陥りやすい間違いなどを解析している。日本のデータのみなので日本人特有の傾向かは分からないが、例えば「L」と「R」の音の違いを間違えやすい――といった傾向などが見られるという。ユーザーが学習すればするほど、3Oはユーザーを理解し、より効率的な学習をサポートできるようになる。

 3OについてイェンソンCTOは「豊田工業大学シカゴ校との共同研究として、現在も開発を進めています。使っているAI自体はニューラルネットワークを基にしたとてもシンプルなものですが、膨大な学習データを独自で持っていることがわれわれの強みです。データがあればあるほど学習者にパーソナライズされるようになっていきます。今後もデータが集まることで精度はより高くなっていくでしょう」と説明する。

 教材は、TOEIC形式の問題を問いていくものではなく、UberやPayPalの話など、ビジネパーソンが興味を持ちそうな読み物をベースに語彙(ごい)力、リスニング力、リーディング力を鍛えていくというもの。これらは全て自社で作成したオリジナルコンテンツだ。

 パーソナライズが進んでいくと、学習効率を上げられるという。コーリジャパンの調査では、TOEICのスコアを100点伸ばすのに掛かる学習時間を、一般的な授業を受ける形式と比べて4分の1に短縮できたとしている。

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