豊田工業大学シカゴ校との共同研究の窓口を務める古井氏は、イェンソンCTOの東工大院生時代の指導教員でもある。古井氏は1970年ごろから音声認識技術を研究しており、日本のAI研究や開発の現場を数十年にわたって見てきた人物だ。
教育業界でのAI活用について、古井氏は「まだまだこれからでしょう」と話す。「AI技術は進歩していますが、それをどう使いこなすかは難しい問題です。教育に関しても、言語学習に限らずユースケースを提案していく必要があるでしょう。質の良いデータをどう集めるかは大きな課題です」(古井氏)
学習塾などでは、従来からの個別指導にAIを導入し、さらなる学習効果を追求するケースも増えてきている。教育業界でのAI活用という観点では、まずは民間教育から普及が進んでいきそうだ。
古井氏は、米国や中国に遅れを取っているといわれる日本のAI業界の現状についても「日本はたこつぼ化が進んでいる」と警鐘を鳴らす。
「AIの研究・開発は少人数でできるものではなく、優秀な人たちが結集して取り組む必要があります。しかし、日本はたこつぼ化が進んでおり、国の研究所ですら各所がバラバラに研究をしている状況です」(古井氏)
さらに、「たこつぼ化された範囲内でできることしか実現されておらず、こうした状況は非常にもったいない」とし、「論文公開サイト『arXiv』では、1日100本ものAI関連論文が公開されています。それらを読んで実際に検討してみるということをチーム一丸となってやらないと、最新情報をキャッチアップすることもできません」と語った。
また、日本国内だけでなく海外との連携も考えるべきだという。「場合によっては、他の国と一緒に研究に取り組んでも良いでしょう。中国や米国の人たちと一緒にやる覚悟と実効性がなければ、今後さらに差が開いていくでしょう」と懸念を述べた。
日本では、AIやデータを活用できる人材の不足も課題になっている。活用から研究まで、日本のAIを盛り上げていくために立ちはだかる壁は大きい。
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