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ワコム社長が西新宿オフィスの一角を私物化、ダンススペースとして娘に提供か “物言う株主”が解任提案

» 2026年05月15日 19時00分 公開
[林裕也ITmedia]

 ワコム(埼玉県加須市)の筆頭株主である英投資ファンドのアセット・バリュー・インベスターズ(以下、AVI)は5月14日、ワコムの井出信孝社長と中嶋崇史業務執行取締役COOの解任を求める株主提案を行った。AVIは、井出社長の経営下でブランド製品事業が失速し株価が伸び悩んでいることに加え、西新宿のオフィス内に社長の娘が利用する専用のダンススペースを設けるといった“公私混同”が従業員の士気を著しく下げていると指摘している

取締役2名解任議案を提出(出典:AVI資料)

 AVIは2021年10月に投資を開始したワコムの筆頭株主(持株比率13.8%)で、長年にわたり企業価値向上に向けた対話を続けてきたという。しかし過去5年間にわたってワコムの株主総利回り(TSR)が、配当を考慮した株価指数「配当込みTOPIX」に劣る点や、円安の影響を除いた営業利益も21年3月期から約4割減少している点を問題視。こうした状況の一因として、井出社長による“密室経営”と、会社資産の私物化を挙げた。

 その一つが、「住友不動産新宿グランドタワー」(東京都新宿区)31階にあるワコム東京支社フロアの利用実態だ。同支社の年間賃料は数億円規模と推計されるが、その一角、見晴らしの良い角区画が「ダンススペース」として占有されているという。AVIは、井出社長の娘でありダンサーのMIDORI氏が、少なくとも5年以上の長期にわたって練習や撮影に使用していることが調査で判明したとしている。

低調な株価推移(出典:AVI資料)
連結業績の実力値は低迷(出典:AVI資料)
ダンススペースの位置検証(出典:AVI資料)
ワコム東京支社31階では、見晴らしの良い角に位置する区画がダンススペースとして利用されているという(出典:AVI資料)
井出信孝氏の娘は東京支社セキュリティ区画内のダンススペースを少なくとも5年以上の長期にわたってダンスの練習及び撮影スペースとして利用(出典:AVI資料)

 AVIのヒアリングに応じた従業員からは「会議室としての登録もない謎のスペースで、履歴や入出記録も残りません。徹底的に対策されたうえで私物化されている印象」「井出社長が会社を私物化しているのを見ていられなくて、それで退職してしまった社員もいます」といった声が上がっている。この一室の年間賃料相当額は500万〜850万円と推計され、AVIはこのような公私混同と評価されてもやむを得ない行為によって、従業員の士気を著しく損ね、企業価値を毀損(きそん)していると主張する。

 AVIはワコムに対し、状況を確認したが、納得のいく合理的説明は得られなかったとしている。

ワコムIRによるAVIの質問事項への回答(出典:AVI資料)

 さらに、井出社長が自ら設立し代表理事を務める一般社団法人「コネクテッド・インク・ビレッジ」(CIV)に対しても、ワコムから総額2億8000万円もの寄付金が拠出されていると指摘。ワコムとCIVが共同主催するイベント「コネクテッド・インク」は、井出氏の社長就任以降、技術展示からアート色の強い内容へ変化し、MINORI氏も演出やダンサーとして毎年出演しているという。

ワコムから一般社団法人コネクテッド・インク・ビレッジ(CIV)への寄付金の流れと役員の関係性(出典:AVI資料)

 AVIは、ワコムの取締役会が経営の監督機能を果たせておらず、ガバナンス不全に陥っていると判断。ワコム社内の研究開発予算が制限される中で不透明な支出が続くことに危機感を示し、井出社長および中嶋COOの解任と、新たな社外取締役の選任を提案した。AVIは「株主提案に賛成いただくことが株主共同の利益に資する」としており、適切な役員構成への刷新を通じて、ワコムが本来持つと想定する一株当たり1300円の価値の実現を目指すとしている。

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