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「ステマとは何か」を考える 歴史的経緯と対策の現状otsuneの「燃える前に水をかぶれ」(1/4 ページ)

» 2019年12月24日 13時28分 公開

 2019年、ステルスマーケティング(以下ステマ)という言葉をネット炎上事例で目にすることが増えました。ステマとは「消費者に広告であることを隠して、騙して広告を読ませるマーケティング手法」のことです。この言葉の意味や歴史を詳細にとらえている人は実は少ないのではないかと思います。

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 筆者は広告業界の専門家ではなくネット炎上対策の専門家なので、主にインターネット利用者(以下読者)の立場とネット炎上に関わる視点から解説します。

※私の会社や親しい人間の事例については、分析記事にはそぐわない弁護や反論になるのであえて記事では触れてません。

ステマ紀元前

 ネットにおけるステマ以前にも、類似の手法として「サクラ」「やらせ」という表現がありました。サクラは江戸時代からある言葉で、お客ではない内部の人間が観客のふりをして繁盛しているように見せかける手法です。バンドワゴン効果という行動心理学の用語は、多数の他人が選択している物は自分も選択したくなるという現象があることを指します。やらせレビューや品切れ商法など、現代のネットのマーケティングにおいても利用されている心理現象です。

 バナー広告やポスターなどの従来からある広告手法は、読者が見ても効果が薄いという実情があります。それらは広告だと容易に判別できることで印象に残らず、読者が読み飛ばしてしまうからでしょう。

 しかし営利企業や商業ネットメディアおよびそれらに関わる芸能人、モデル、漫画家、プロライターなどは経済活動として記事を執筆して情報発信をしています。広告代理店や編集者などメディアの実作業を担う人たちも同様です。

 消費者の良い認知を上げることで商品を売りたいプロモーション活動は全て広告ビジネスが関わっています。有料記事やサブスクリプションや会員制モデルやゲームのガチャなど直接的な課金ビジネスであってもプロモーション活動とは無縁ではありません。

経済と社会規範の対立

 読者側の視点では「無料で無限に面白い記事を読みたい」というのが偽らざる本音になります。

「コストが掛かる有益な面白い情報は、金銭で報われることで維持できる」→経済的な現状

「利益をもらってるので本音を書いていない情報なのではないか。本音が知りたい」→社会規範

 インターネットは始まってから普及する段階まで、ネットの情報発信だけではお金を儲けられない、本当に書きたいことだけを書くという社会規範のルールで発展してきたという歴史的経緯があります。

 例えばネット用語で「嫌儲」と呼ばれる表現があります。お金儲けのためにインターネットを使うべきではないという主張や、ネットでの活動が収入につながっている他人への嫉妬を意味する言葉です。社会規範だけを重視して経済的ルールを否定する読者心理が存在すると言えるでしょう。

 読者の持つ「無料で無限に記事を読みたい」という要望は経済活動的には叶えることは難しいと言えます。

 この経済的現状と社会規範が矛盾して対立していることを、メディア側は読者と向き合って解決することが求められています。GoogleやFacebookなどは、読者の個人情報を元に広告内容を調整したパーソナライズド広告を出すことで無料閲覧モデルであっても経済的に維持運営しています。しかし、EUでは個人情報保護の視点で問題視されており、完璧な解決策とは言い切れません。

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