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「ステマとは何か」を考える 歴史的経緯と対策の現状otsuneの「燃える前に水をかぶれ」(2/4 ページ)

» 2019年12月24日 13時28分 公開

社会規範のフリをした経済活動

 例えば商品レビュー記事は読者からすると、記事執筆者が自腹で購入した場合と、金銭提供や商品提供された場合では記事のニュアンスが変わり、「提供の場合は辛辣な本音が書かれていないだろう」という心理があります。前者の本音記事は社会規範に則っていて、後者記事は経済活動ということになります(実際には0か100で分類は出来ず、両者が混ざった状態になることが多いですが)。

 新聞・雑誌・テレビなどの旧来のメディアでは経済活動と社会規範の区別を明確にするべきという規制があります。例えばCMは番組と区別できるように放送しなければならないということが放送法第12条「広告放送の識別のための措置」にも明記されています。

 しかしネットメディアでは当初からその区別が曖昧なまま、メール、チャット、ネットラジオ、ニュースサイト、まとめサイト、ブログ、SNS、動画投稿……など新しいサービスが開発されて普及するたびに経済活動(マネタイズ)と社会規範(無料利用でユーザー数増加)がないまぜになりながら進化していきました。

 読者には「無料で無限に面白いものを」という性質があるので、社会規範に則って本音が書かれているフリをした提供記事を、そうであることを隠して読んでもらえれば、高い広告効果が得られます。

 これが広告を出す側がステマをやりたがる理由です。

ステマの歴史経緯

 ステマ騒動は米国では2003年から存在します。

 日本では2005年あたりから2010年ごろまで「やらせ行為ブログ」やクチコミマーケティングやPay-Per-Post広告が炎上しました。

 2012年のネット炎上のときに「ステマ」という言葉が定着します。

 食べログレビューやペニーオークション詐欺事件などが報道で扱われることで、消費者を騙す欺瞞的な広告行為が存在することに注目が集まりました。この年は主にサイバーエージェントのアメブロ芸能人ブログにおいて本音のフリをした提供記事が大量に掲載されていることが発覚し、多くの読者たちが失望します(記事マッチ騒動)。

 2015年にはネイティブアドという言葉で、記事のような体裁の広告手法が流行ったり、ノンクレジット広告と呼ばれる広告主と記事筆者の関係性を明示しない広告手法が話題になりました(当然、読者視点では騙されたと感じる手法だが、広告業界は認知効果を上げるために行っていた)。

 この年には週刊ダイヤモンドがステマ批判特集を出版し、PR会社ベクトルが謝罪対応する事態になったり、Yahoo!ニュースが消費者保護のためにノンクレジット記事広告の掲載を停止することになります。

 またAOL、AppBank、ソシオコーポレーション(ロケットニュース)などが記事広告掲載について謝罪をしました。

 つまり2015年は第二次ステマ炎上の年と言えるでしょう。

 2016年にはテレビ局IBC岩手放送でR-1ヨーグルトのステマ騒動。2017年はタレントが浅草メンチ屋のオーナーであることを伏せてグルメ番組で絶賛したことが判明し炎上。

 青汁ランキングサイトにて自社社員が身分を隠して青汁ダイエット企画を投稿。謝罪対応に。

 クラウドワークスにおいて「政治系ブログ記事作成案件」騒動。

 そして2019年にはアナ雪2漫画騒動が起こりました。

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