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超音波で操作する風船型ディスプレイ 東大が開発Innovative Tech

» 2019年12月27日 21時16分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学の篠田・牧野研究室が11月に発表した「バルーン型ディスプレイシステム」は、超音波を用い、操作する風船に映像を投影できるものだ。

photo バルーン型インタフェース

 音響放射圧を用いて、風船の3次元位置を非接触で制御し、それに映像を投影することで、空中に映像を映し出す仕組み。風船を手で移動させると、投影した画像も同時に移動するインタラクションも提供する。

photo 立体映像を介してバルーンを操作するユーザー

 開発したシステムは、スクリーンになる風船と、それを操作する複数の空中超音波フェイズドアレイ(Airborne Ultrasound Phased Array、AUPA)デバイス、風船の位置を測定する深度センサー、映像を投影するプロジェクターで構成される。

photo セットアップ画像

 風船にヘリウムを注入し浮遊させ、天井には、下向きにAUPAを複数台配置する。各AUPAは浮遊する風船の中心に焦点を形成し、そのときに生じる音響放射力を用いて風船の位置を3次元で制御する。プロジェクターによる投影位置は、Microsoft Kinect V2で取得した風船の位置を用いて決定する。

 3Dキャリブレーションされたプロジェクターは、風船の表面に映像を投影する。立体投影モードでは、透視補正映像がレンダリングされ、ユーザーは3Dシャッター方式メガネを通して立体映像を目視できる。

 映像を投影した風船を超音波で移動させることで、風船だけでなく映像も移動するため、あたかもバーチャルオブジェクトが空中を移動しているかのように感じる。

 さらに、ユーザーは風船を手でつかんで物理的に移動させることで、投影した映像を操作できる。こちらも映像が追跡し動くため、バーチャルオブジェクトを操作したように感じられる。

 ユーザーが風船をつかんだか否かは、ユーザーの手と風船の距離で判定する。深度センサーで手の位置を追跡し、手が風船に接近したまま一定時間が経過すると、風船をつかんでいると判断し、風船の位置を指示できるようになる。風船をつかんでいる状態では、常に目標位置が現在の位置で更新されるようになっている。

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