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「腕があと2本あったら」を実現するロボットアーム フランスと東大の研究チーム、「Co-Limbs」開発Innovative Tech

» 2019年12月25日 14時53分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 仏CNRS LIRMMと東京大学 稲見・檜山研究室の研究チームが11月に発表した「Co-Limbs」は、ウェアラブルロボットアーム(Wearable Robotic Arms、WRA)を直感的に操作できるユーザーインタフェースだ。

photo Co-Limbsでウェアラブルロボットアームを操作している様子

 背中に装着したロボットアームの手首には、手で握れるハンドヘルドツールが装備されており、これを動かすことでアームの位置を自在に決めることができる。

 具体的には、力覚センサーとアドミッタンス制御を組み合わせて決定する。アドミッタンス制御とは、外部から入力された力をベースに位置や速度を決定する制御法。バネのように元に戻す力ではなく、力を入れた方向に応じて柔らかく変化する。

 力を加えると、アームに取り付けた6軸力覚センサーが加えられた力とモーメントを検出する。検出した値に基づき運動目標値を計算し、その目標に対してアームの各軸の角度を制御する。アームは、人間でいう肩と肘部分に関節があるため、グリグリ動作し、初心者でも訓練なしに直感的に使いこなせる。

 ハンドヘルドツールには、親指操作のボタンが2つ付いており、簡単な入力情報を組み入れられる。例えば、ロボットハンドを握ったり離したり、他にも後述するロボットアームの動きを記録、再生を可能にする。

photo ハンドヘルドツールには、入力ボタンが2カ所搭載されている

 以下の3つのサンプルデモが紹介されている。

  • パッシブアシストモード:ロボットアームを目的の姿勢に合わせて、特定のシナリオで活用する。例えば、トレイを持ったり、自撮り棒の役目をさせたり、熱いお皿をつかんだり、重たいスーツケースを引っ張ったり、傘をさしたりなど。
  • パワーアシストモード:力仕事をサポートする。例えば、大きく重たい箱を合計4本の手で持ち上げたり、座った状態からの立ち上がりをサポートしたりなど。力が背中や腰に分散されるのが特徴。
  • プレイバックモード:ボタンを押しながらロボットアームを動かすと、その動きが記録され、再生するとその動きがループされる。例えば、うちわであおぐ動きを繰り返させるなど。
photo Co-Limbsを用いたロボットアームの使用例。左列上段から、トレイとして使用、自撮り棒として使用、熱い皿をトースターから取り出すのに使用、片方にペットボトル片方にキャリーバッグを運ぶのに使用、右列上段から、傘を持つのに使用、うちわをあおがせるのに使用、重い荷物を運ぶのに使用、板を受け取るのに使用

 本研究は、「JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト」の研究成果である。

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