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超音波で多様な触覚を生成 東大が開発した「ReFriction」Innovative Tech

» 2019年12月29日 12時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学 篠田・牧野研究室が11月に発表した「ReFriction」は、超音波を用いて、遠隔で発泡スチロールの摩擦を変える装置だ。

photo 提案するプロトタイプ。上45度からAUPAが集束放射する。

 空中超音波フェイズドアレイデバイス(Airborne Ultrasound Phased Array、AUPA)からの集束放射を発泡スチロール表面に当てることで多様な触覚を生成するデバイスを開発した。

 これは、発泡スチロールの表面に超音波を当てると、スクイーズ膜効果(振動面に指を近づけると、空気の膜が指と振動面の間に生じ、それにより摩擦力が減少する現象)による表面摩擦の低減によるもの。この現象は、発泡スチロールの音響インピーダンスが、空気の音響インピーダンスに近いという事実によると考えられる。

 本提案では、触覚フィードバックの生成と同時に、発泡スチロール表面にプロジェクターで画像を投影する。赤外線センサー(Xperia Touch)で指先の位置を計測し、プロジェクターで投影する画像とAUPAの駆動を制御する。そのため超音波は、画面に触れたときにのみ放射される。

photo 提案手法を用いたアプリケーション。左上:スライダー、右上:ストライプ、左下:粗さ、右下:滑らかさ

 発泡スチロールは使い捨てが可能で、何らかのメカニズムを組み込む必要がないため、使い捨ての大型スクリーンや、手術室など衛生面が問われる現場での応用も可能。

 さらに、AUPAは超音波の焦点を任意のポイントに設定できるため、2D平面だけでなく任意形状の3Dオブジェクトの表面摩擦を制御することも期待される。

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