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AIブームは熱狂から平静へ? 19年のAI業界から未来を占うマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/4 ページ)

» 2020年01月08日 07時00分 公開

AI開発は不足から飽和へ

 数年前まではAIを開発できる人材やベンダーは不足していましたが、19年で一気に増えました。ライブラリ・ツールが充実して開発環境も整備されており、ネットや書籍を通して日本語の技術情報も豊富になりました。

 こうした動きもあって、AI開発の参入障壁が下がりました。かつてはユーザー企業に向けたコンペを開催しても参加企業は数社でしたが、19年前後では10社20社と右肩上がりで増えていきました。その結果、AIベンダーは需要に対して供給過多となり、飽和状態に差し掛かりました。

 一般的にシステム開発は以前から取引や実績のあるSIerに依頼しますが、ノウハウが少ないAI開発ではコンペを行って新たな開発先を探します。AI開発案件を請けるためには実績が必要ですが、新規参入企業に開発実績はありません。しかしコンペであれば、見栄えの良い提案と安価な見積もりを提示すれば、新規参入者でも受注できます。

 AI開発ベンダーが増えれば、ノウハウが業界や社内で蓄積されるメリットもありますが、良い話ばかりではありません。よく分からないベンダーにAI開発を依頼してしまうと、エンジニアが逃げ出し、開発責任者が左遷され、最終的には経営者が「AIは使い物にならない」と結論付けてしまうことにもなりかねません。

 AI開発は性質上、完成度を保証できません。そのため本開発の前に一定の開発費でPoCを行い、本開発に進めて要件を満たせるかを判断します。その結果、実用的な完成度に至らないなどの理由で、本開発へ進めないPoC貧乏が後を絶ちません。売上につながらないPoCは「Po死」となり、プロジェクトチームどころか会社の存続すら怪しくなります。

 目立った失敗事例としては、全自動で洗濯物を畳むロボットを開発していたセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの倒産が挙げられますが、表に出てくる失敗はこのように大規模かつ話題性のあるものです。事業部の閉鎖、プロジェクトチームの解散、降格などの人事異動など、表に出ない失敗は多々あります。

 ベンダーの技術力や開発するエンジニアの能力に依存する「AIガチャ体質」は変わらず、ベンダー選びが重要である点は今後も変わりません。

 しかし、提案段階でベンダーの能力を見抜くことは難しく、見極めにも限界があります。解決策として内製化もありますが、エンジニア不足の昨今でAIを開発・実装できる人材を採用するのは難しいのが現状です。そこで発注元企業は社内人材のAIリテラシー向上に取り組み始めています。

 ここが次のテーマとなる「採用から育成」につながります。

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