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AIブームは熱狂から平静へ? 19年のAI業界から未来を占うマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/4 ページ)

» 2020年01月08日 07時00分 公開

AI人材は採用から育成へ

 AI導入・活用の失敗と外注依存の限界から、多くの企業が社内人材の育成に目を向けています。開発を外注する際、能力のあるベンダーを選定できる人材が社内にいなければ、プレゼンや営業だけが上手な危うい企業を見抜けません。

 AI開発を内製化するにも、人材の採用には費用がかかり、人事給与制度を変えるのも難しいでしょう。一部SIerや電機メーカーは優秀なAI人材にかなりの高給を保証するなど特別な給与体系を作りましたが、採用実績は不明です。人材採用の限界を迎えて、社内での人材育成に注力し始める企業が増えたのが、19年の動きです。

 こうした背景から、さまざまな法人向けAI人材育成トレーニングが提供されています。好調な業績を上げる人材育成サービス提供企業は、採用強化やオフィス移転などの動きを見せています。

 また、AI導入・活用における業務知識(ドメイン知識)の重要性も、社内の人材育成を後押しする要因です。社内業務におけるAI活用は、費用対効果や技術的な難易度も関わるため、AIに詳しくても業務に詳しくない外部の人間では正しい判断ができません。

 特に大企業では社内政治がAI導入・活用における大きな壁となるため、抵抗勢力に対抗してプロジェクトを進めるにはどうしても内部の人間が必要になります。このような観点からも社内での人材育成は理にかなっているでしょう。

 経済産業省が主導するAI人材育成の政策「AI Quest」や、全国の大学で相次いだデータサイエンス学科の設立を含めて、人材育成への注力が進んだ年といえます。

まとめ:熱狂から平静へ 

 ここ数年続いたAIブームはピークを超え、今後はトレンドサイクルに従って下降線をたどるでしょう。一時的な流行で新規参入した企業は多々あれど、実力のある企業との差は一朝一夕では埋められません。

 企業に求められるのは永続性であり、費用をかけて製品やサービスを開発したら、それを利益にして会社を存続させなければいけません。

 19年も数多くのスタートアップから「それってAIなの?」「それをAIでやる必要がどこにあるの?」というプレスリリースによる「誰得」な製品・サービスが数多く誕生しました。一方で大企業は「リアルデータ」「Society 5.0」「SDGs」に始まり、各社独自の世界観で理想の将来像を提示していますが、まだまだそれは形になりません。

 AIを含めたIT技術が日進月歩で進化する中で、「とにかく自動化・省力化を進めなければ」という焦燥感と、「今までのやり方を変えてはならぬ」という前例主義が重なって誕生したであろう製品も存在します。19年12月には、ロボットアームを使って契約書にハンコを押す“自動押印ロボ”がネットで話題になりました。

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