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「チームの半数は修士号を取得」「20カ国以上から採用」 世界のAI人材が日本のベンチャーに集まるワケ(2/3 ページ)

» 2020年01月09日 07時00分 公開
[周藤瞳美ITmedia]
採用を担当するスリマさん

 「海外のエンジニアには東京で働きたいという人が多くいますので、“Hello from Tokyo, Do you want to work in Tokyo?”などとLinkedInのヘッドラインに書いておくと、返事をもらいやすいですね。エンジニアにとって東京はとても魅力的な街です」(スリマさん)

 他にも海外のAIカンファレンスへのブース出展、ハッカソンの開催、社員に人材を紹介・推薦してもらうリファラル採用の実施など、さまざまな取り組みを行っているという。スリマさんは、研究開発を行うリサーチャーやエンジニアに対しては、「何よりも自社のAIのレベルを理解してもらうことが重要」と指摘する。例えば、博士号取得者が何人いるか、オックスフォード大学やケンブリッジ大学など有名大学の出身者がいるかどうかなど、プロフェッショナルな人材をそろえていることが会社としての価値になる。

 「当社の研究分野に近い論文を書いているリサーチャーに直接アプローチするケースもあります。ラマルさんの採用も、彼がNeurIPS(機械学習分野の国際会議)で書いていた論文を当社のR&Dチームのトップが見たことがきっかけでした。こうしたアプローチをする場合は、当社が出している論文をお送りして、『読んでいただけましたか? 興味はありますか』と尋ねます」(スリマさん)

研究者にとっての魅力的な環境とは?

ラマルさん

 ラマルさんは、英国のAI企業DeepMindからCogent Labsへと移ってきたリサーチエンジニアだ。DeepMindでは汎用人工知能の実現を目指してさまざまな研究プロジェクトが進められており、ラマルさんはそのうちニューロサイエンス(脳科学)のプロジェクトを担当していた。

 Cogent Labsにおけるラマルさんのポジションは少し特殊で、中長期的な視点で研究を行うリサーチャーとして、R&Dチームに採用されている。ラマルさんのような世界トップレベルのAI研究者が所属していることは社外への大きなアピールにもなるだろう。

 ではラマルさんにとってのCogent Labsの魅力は何だったのだろうか。ラマルさんは、さまざまな条件を総合的に判断した上で転職を決意したとしつつも、一番の決め手は「研究の自由度に魅力を感じたことでした」と振り返る。

 「DeepMindは、汎用人工知能の実現を目標に掲げて基礎研究に取り組んでいますが、研究チームごとにテーマがトップダウンできっちりと決められていました」とラマルさん。自身の興味関心に沿って自由に研究したいと思っても、それが許される環境ではなかったという。Cogent Labsでは、プロジェクトに沿った研究をしつつ、自分が関心を持つテーマにもチャレンジできるため、心が動いた。

 組織の垣根を越えて活動できるスタートアップという環境にも興味を持った。ラマルさんは「大企業には組織が整っていることによる弊害もあります。1つの問題に対して、さまざまな人とコラボレーションしながら解決策を考えていけるスタートアップだからこそできる仕事は、ダイナミックで面白そうだと感じました」と説明する。

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