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通信インフラの監視やコーディングも自動化 情報・通信業界のAI活用よくわかる人工知能の基礎知識(2/3 ページ)

» 2020年01月21日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

内部業務の自動化、コーディングも対象に

 通信会社の中では、顧客への各種サービスを実現するために、他にも膨大な事務作業が発生している。その多くが複雑だが欠かすことのできない手続きであり、従来は大量のスタッフがその対応に当たるしかなかった。そうした事務作業を人間に代わって担当してくれるツールとして、RPAがある。RPAは、AI-OCRなどAI技術と連携することで、その効果をさらに向上させることもできる。

 特に膨大な事務作業が発生する業界はRPAにとって魅力的な市場であり、多くのRPAベンダーが、通信業界を金融業界に並ぶターゲットとして位置付けている。

 例えば大手RPAベンダーの一社である米Automation Anywhereは、日本の通信業界におけるRPA活用の可能性について解説している。そこで紹介されている事例の一つによると、900万人以上の顧客を抱える某通信会社において、1件の手作業をRPAに置き換えただけで、工数の75%削減とエラー率ゼロが達成され、年間23万5000ドルものコスト削減効果が得られたそうだ。

 ドイツのコンサルティング会社Horvath & Partnersが発表したレポートによれば、今後5年の間に、通信業界内の業務の30〜40%が何らかの形でRPAによって代替・支援される可能性がある。上記のような成功事例は、今後珍しいものではなくなるはずだ。

 また情報産業の分野では、より根本的な自動化が進もうとしている。それはコーディングの自動化だ。いくら優秀なプログラマーでも、人間である以上、ミスや見落としは発生する。そのため人間によるコーディングを回避しようという試みは、随分前から繰り返し行われてきた。

 例えば1994年に日本アイ・ビー・エムの大和開発研究所が発表した「ホームページ・ビルダー」は、テンプレートからパーツを選んで配置するだけで、簡単な設定でWebページが作成できるというもので、実際に使ったことがあるという方も多いだろう。もちろん作成できるWebページのレベルには限界があるが、ユーザーにはHTMLの知識は要求されない。

 米MicrosoftのAI Labが18年8月に発表した「Sketch2Code」は、AIの力を使って、同じようにWebページの作成を支援してくれるというもの。ユーザーに求められるのは、作りたいWebページのイメージを、手書きのワイヤーフレームで表現するだけ。その画像をアップロードすると、AIがそれを把握し、Webページを自動生成してくれる。

 ここで生成されるのは、完成品というよりもプロトタイプで、それをたたき台として人間のプログラマーが最終的なページをつくり上げるという使い方が想定されているようだ。

 もちろんこうした「AIプログラマー」が、明日突然、人間のプログラマーから職を奪うというわけではない。またある程度優秀なコーディング自動生成AIが登場しても、しばらくはSketch2Codeのように、人間のプログラマーの補助として彼らの作業を軽減するという使い方がされるだろう。しかし大きな流れとしては、AIによる自動コーディングでカバーされる領域が拡大することは確実だ。

 IT企業の中には、自社内の業務の自動化を進めるために、自分たちでチャットbotなどのAIを開発してしまうところも多い。例えばコンサルティング会社のアクセンチュアでは、日本法人内において、独自に「Randy-san」というSkype用のチャットbotを開発して社内に展開している。

 これは社員からの人事制度系の質問に答えることを想定しており、アクセンチュアの独自AIプラットフォーム「AI Hub」上に構築されている。こうした自社向けに開発されたAIツールが、顧客企業に提供されるという例も今後増えてくるだろう。

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