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アプリでは分からない「時刻表」の魅力

» 2020年02月09日 17時32分 公開
[作倉瑞歩ITmedia]

 地名や駅名を入力するだけで電車の時刻や乗り換え時間を案内してくれるアプリは便利ですが、今も書店に行くと「時刻表」が売られています。スマートフォンで何でも検索できる時代になぜでしょう。実は、時刻表にはアプリに負けない実用性と魅力があります。今回は、時刻表の便利さと楽しさを、テツ視点で力説する回にしたいと思います。

時刻表の例。筆者は交通新聞社の「コンパス時刻表」を持って旅に出ます

連載:非テツでも楽しめる、テツ好きが注目するチマタの話題

ここでは鉄道に関するちょっとした豆知識をお伝えすることで、何となく知識が増えたなとか、みんなが知らないことが自慢できたりとか、まあそんなことを目指してお届けしていく、テツの与太話です(作倉瑞歩)


 いわゆる乗り換え案内アプリは、今いる場所と目的地を入力し、「何時何分に到着したい」などと設定するだけで、目的地までのルートと乗車時刻、乗り換え駅、所要時間などを瞬時に表示してくれます。最近は「Googleマップ」やiPhoneの「マップ」アプリでもルートを調べられるので、使っている方も多いでしょう。

 便利な世の中になったなあ、と思うのですが、こうしたソフトが出てくる前は「時刻表」が、自分が利用する駅から目的の駅までの時間、乗り換える電車を知る有効な手段でした。「スマホで事足りるから、もう時刻表なんて使わないよ」という人が多いと思いますが、現在でも時刻表は毎月発行されていて、私のような乗り鉄にとっては必須のバイブルとなっています。

 時刻表は見方が分からないという人もいます。少ないスペースで全国の時刻を掲載するため、発車時刻だけでなく「レ」やイスのマーク、「=」を縦にしたものなど、記号を含めて書かれているのが原因の一つ。また1ページは縦に30段分かれており、そこに列車の時刻がひたすら書かれているので、一体どこを見たらいいのか分からない、という人もいます。でも記号を理解し、少し慣れると便利な点がいくつもあることに気付くでしょう。

時刻表には必ず記号の意味が書かれています。写真は交通新聞社行「JR時刻表」2020年2月号より

列車がやってくる時間が分かる

 アプリで分からない情報として、列車の「入線時刻」があります。新幹線や特急では、指定券を買えば座席は確保されますが、普通列車、いわゆる鈍行では席を自分で確保しなければいけません。ちょうど混み合う時間に当たってしまい、立ちっぱなしで疲れたという経験をした方も多いのではないでしょうか。

 そんなときに役立つのが時刻表です。始発駅には入線時刻と入線ホーム番号が書かれていますので、列車が何時にやってくるのか分かります。これを目標に駅に到着すれば座れる確率もアップ。指定席券を持っていたとしても、ホームで待ちぼうけを食う時間を短縮できます。

アプリより柔軟に電車を選べる

 旅行や出張で電車に乗るとき、待ち合わせなどのために毎正時や15分、30分、45分あたりの、キリのいい時刻を目標にアプリなどで検索することが多いのではないでしょうか。でも、定時運行されている列車が表示され、「じゃあその列車に乗るか」と思ってみどりの窓口に行くと、満席で指定席が取れないことがあります。

 実は15分おきなどの分かりやすい時刻には、季節にかかわらず運転される列車が割り当てられています。一般の旅行客だけでなく、旅行代理店などもその時刻でツアーを組むことが多いため、人気路線ではどうしても満席状態になりがちです。

 このようなときには“臨時列車”を調べて乗るのが吉。時刻表には乗りたい列車の前後に走る列車の時刻も書かれていますので、目的の列車以外で利用できる列車もすぐに分かります。もちろんアプリも臨時列車を含めてピックアップしてくれますが、表示されるのは5候補くらい。時刻表であればもう少し柔軟に、幅広く列車の時刻を見渡せるので、慣れると素早く的確に判断できるようになります。

“妄想旅”も楽しい

 わたしがよくやるのは、時刻表での妄想旅です。ある列車に乗った気分で時刻表をたどり、「ここでこう乗り換えたら?」「ああ、ここで止まったらこんな風景が見られそうだ」などと考えるのは楽しいものです。旅行や学祭などのイベントは準備期間が一番楽しい、と思う人には分かってもらえるのではないでしょうか。

 こうした妄想は、いわば事前のシミュレーションですから、実際に旅にも役立ちます。

 先日、長野県の茅野まで行ったのですが、中央本線の名物弁当「元気甲斐」を食べたいと思いました。東京駅で日本レストランエンタプライズが展開している「駅弁屋 祭」には各地の駅弁が並んでいることで知られていますが、ここにもありません。ネットで調べたところ、購入するには小淵沢駅で途中下車しなければならないようです。

 茅野には15時に着きたかったので、時刻表で調べて新宿駅11時30分に発車する「あずさ13号」に乗り、まずは13時25分に小淵沢着。そこで元気甲斐を買い込み、14時5分発の普通列車に乗車しました。わざと時間に余裕を持たせて乗り換えるのですから、アプリなどではすぐには出てきませんよね。

現地に行かなければ入手できない「元気甲斐」。2段弁当になっている。1600円(税込)

 旅の目的は人それぞれですが、目的地だけでなく、駅弁や電車などにも着目すると新しい発見や面白さがあるもの。普段とは違う景色が見たくなったとき、時刻表は強い味方になってくれます。

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