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飲み会の帰り道での孤立に、AR シミュレーションで立ち向かうデータサイエンスな日常(2/3 ページ)

» 2020年02月18日 07時00分 公開
[篠田裕之ITmedia]

 シミュレーションに当たり、まずは会社の同僚をイメージした3Dモデルを作成した。実際の同僚は性別も年齢も性格もさまざまだが、今回は都合上、1人の代表的なタイプをモデリングし、中身のパラメータを変えることでさまざまなシチュエーションを再現することにした。

私の周りによくいる一般的な同僚男性の3Dモデル

 アプリを立ち上げると、現実の環境を空間認識し、ARで飲み会帰りの同僚の3Dモデルが複数人表示される。

ARで表示される同僚たち

 今回は訓練用途のため、居酒屋から駅までの移動距離を100mほどと短めに想定し、その間で仮想的な帰り道を歩きながら、いかに同僚と会話できたかを記録していく。

 今回作成したシミュレーションの手順は以下の通り。

  • シミュレーションを開始すると、ARで複数の同僚が表示
  • 同僚はそれぞれ、ランダムにサブグループに分かれる
  • プレイヤーはいずれかのサブグループ(あるいは1人)の同僚に近づき話しかける
  • 誰とも会話しないと、徐々にメンタルが減少。同僚に話しかける際はメンタルを消費するが、会話が始まるとメンタル消費が止まる。メンタル消費量は、サブグループの人数によって異なる(多いほど気軽)
  • サブグループの人数により、会話持続時間や発言確率は異なる。人数が少ないほど、上記値のばらつきは大きい。つまり、あまり盛り上がらない人もいるが、うまくいけばずっと会話が持続する。一方、多人数のサブグループの場合、メンタル消費リスクは少ないが、総コミュニケーション量も少ない
  • 会話が盛り上がらない場合、そのままだと孤立するため、会話に参加できる他の同僚グループを探す必要がある
  • 最終的に自分のメンタルが0になるか、駅までの距離が0mになるとシミュレーションが終了。総コミュニケーション量のほか、総会話人数などの結果が表示される

 今回、目的となる総コミュニケーション量は以下のように定義した。

  • 総コミュニケーション量=サブグループ人数×発言確率×会話時間

 上記式における発言確率は下記とした。

  • 発言確率=a/(サブグループ人数+1)※ただし、0<a<サブグループ人数+1

 もし均等に発言機会があれば、単純にそのときのサブグループに自分も含めた人数(サブグループ人数+1)の逆数となる。しかし現実にはそうはならないため、自分の発言割合を調整するパラメータaをかけている(aの上限はサブグループ人数+1、つまり発言確率100%であり、自分だけが話す状況となる)。

サブグループ人数および発言確率パラメータaごとの発言確率

 発言確率パラメータaは、下記の通りテンションと相性の掛け合わせとした。

  • a=テンション×その同僚との相性

 テンションはシミュレーションごと、会話ごとにランダムに決定されるが、その値の分散はサブグループ人数に依存するようにした(サブグループ人数が少ないほど分散が大きく、人数が多いほど分散が小さい)。一方、相性はシミュレーションごとに固定となる。テンションがブレる中で、いかに相性の良い同僚を探索できるかが一つの鍵となるようにした。

 では、本環境で早速飲み会の帰り道をシミュレーションしていく。

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