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» 2020年02月25日 08時20分 公開

Innovative Tech:その空間だけボケさせる隠消現実メガネ 阪大「IlluminatedFocus」開発

Augmented Realityと対になるDiminished Reality。ボケを使ってそうした隠消現実を実現するデバイスが登場した。

[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 大阪大学の研究チームが2月に発表した「IlluminatedFocus」は、ボケを空間制御する視覚拡張メガネシステムだ。一種の隠消現実(Diminished Reality)デバイスといえるだろう。

 ユーザーの目から実際のモノまでの距離に関係なく、実環境の特定のモノのみを空間的にボケさせる。これにより、特定のモノに人の注目を誘導する、作業集中のため特定の領域以外をボケさせる、顔のシワやシミを消す──といったことが可能になる。

photo (a)提案するIlluminatedFocusシステム。電気式可変焦点レンズと高速プロジェクターから構成される。(b)システムの動作検証。(b-1)実験セットアップ。4つの物体(A, B, C, D)がプロジェクターとレンズの前に置かれている。カメラは人の目の代理として利用。(b-2, b-3, b-4)異なるタイミングでプロジェクターから光を当てる物体を、焦点距離が周期変調されたカメラによって撮影。黄色矢印で示されているように、シャープに見える物体(A, C, D)はそれらが合焦したときに光が当てられ、ボケて見える物体 (B)は、焦点が外れたときに照らされる。(b-5)人の臨界融合周波数(60Hz)を超えて焦点変調がおこなわれると、これらの画像の積分されたものが知覚され、物体Bのみがボケたように知覚される。これによって、通常のレンズ系では起こり得ないような焦点ボケ表現が可能になる。なお、(b-2)から(b-5)の輝度は可視性向上のため輝度補正している

 システムは、焦点距離を電流制御により高速に変調できるETL(電気式可変焦点レンズ)をメガネとし、高速プロジェクターを環境照明として利用する。ETLの焦点距離を高速(60Hz以上)に周期変調させて、焦点の合う位置(合焦位置)を振動させる(焦点スイープ) 。続けて、シャープに見せたいモノに対して、合焦した時にプロジェクターから光を当て、ボケて見せたいモノに対して、合焦しなくなった時に光を当てる。この処理が高速に行われると、パラパラ漫画と同じ原理で、焦点の変調とプロジェクターからの照明はチラつかず、特定のモノだけがボケていると知覚する。

 研究チームは、4つの応用例を紹介している。1つ目は、局所的に空間をシャープに周囲をボケさせ視線を誘導する応用。今楽譜内のどこを見ればよいか、ガイド中に今オブジェクトのどこを見ればよいか、などを視覚的に誘導する。

photo (a)譜面内の見る場所のみシャープに見える、(b)オブジェクトの説明がされている箇所のみシャープに見える、(c)必要ないツールはボケて、かつ、彩度も落としている

 2つ目は、作業に使用するモノ以外はボケさせ排除し、作業に集中させる応用。机上の教科書はシャープに、漫画本はボケさせ、勉強に集中できる学習環境を作る。

photo 机上の教科書のみシャープに、漫画本はボケて見える

 3つ目は、局所的にボケを生成する応用。人の肌のシミやシワを局所的に除去する、動くモノに対してのみモーションキャプチャーで追跡しボケを加える──などの活用を見込んでいる。

photo (a)顔の肌の一部を隠す、(b)動くおもちゃの蜘蛛を追跡しボケを入れる(黄色い矢印は追跡マーカー)

 4つ目は、2D画像内で前景と背景でボケを制御する応用。画像の前景もしくは背景のみにボケを加えることで、奥行きを強調する。

photo (a)(b)前景と背景のどちらかのみにボケを加え奥行きを生成する

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