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「香川県のゲーム規制条例案」は何が狙いなのか マンガで解説サダタローの「ニュースゆる知り!」(3/3 ページ)

» 2020年02月26日 08時00分 公開
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ゲームは「覚せい剤と同じ」?

 「日常生活が正常に送れない」「健康状態に問題が起きてもゲームを止めない」──こんな状態に長期間陥るようなら、確かに依存症といっても過言ではないのかもしれません。

 ゲーム規制条例を推し進めている香川県議会の大山一郎議員は、官邸との協議の場で「アルコールもギャンブルも20歳以上でなくてはダメ。しかしゲームだけは幼児期から触れるのが一番の問題」と発言しており、依存症を起こす原因の一つとしてアルコールなどと同様にゲームを規制したい考えを示しています。

 大山議員はゲームとアルコールなどを同一視する裏付けとして「依存症の原因となるドーパミンの放出量が、ゲームをしたときと覚せい剤を一定量投与したときとで同じという研究が最近出てきている」と発言していました。

 しかし、規制案は科学的な根拠に乏しいという意見も。社会学や精神医学を専門とする大阪大学の井出草平講師は、条例案を科学的に批判する資料を公開しています

 資料の中で井出講師は、「楽しいことをしているときにドーパミンが出るのは当たり前」とした上で、2011年の論文を引用して「覚せい剤と同じレベルで放出されるというのは誤り」だといいます。

 井出講師は他にも、規制案の「60分制限」について基準となるデータが根拠として適切でなく、しかも相関があるといっても因果関係の説明にはならないことなどを列挙して、「現在の条例文は論理性に欠ける」と批判しています。

規制の狙いは「依存症」よりも「ガチャ」?

 条例の素案では規制対象を「射幸性の高いオンラインゲーム」と表現している部分があります。サダタロー氏はこれを見て、有料でガチャを回してアイテムをゲットできる「ガチャシステム」をイメージしているのではないかと感じました。

 どうやらその意図もあるようで、社民党香川県連合の高田よしのり議員は自身のブログで今回の条例案について「ガチャの問題がほとんどすべて」という趣旨の記事を投稿しています

 高田議員は今回の条例案について、「ガチャも射幸心を煽るキャッシュバックのないギャンブル」「大人でも問題点大ありなのに、中高生が簡単に手を出せてしまう現状は恐ろしいこと」としています。

 ガチャに対して時間規制は有効なのかという疑問に対しては、「条例に入れても実効性はなく、なじまないが、保護者に意識してもらい家族で話し合ってほしいという思いで入れた」といいます。

 このように、今回のゲーム規制条例については「ゲーム自体が薬物同様に依存症を引き起こすものとして規制したい考え」と、「ガチャシステムが依存症を引き起こす核だとしてガチャを規制したい考え」の少なくとも2本の柱があることは、ニュースを読み解く上で気を付けていた方が良いでしょう。

「ゲームは1日1時間」の高橋名人は何を思うか

 ところで、ゲームの60分という区切りを聞くと、元ハドソンの“高橋名人”こと高橋利幸さんを思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。

 高橋名人は“1時間”という時間の根拠については「そのときにひらめいた言い回しに近く、根拠はない」とした上で、当時を振り返って「不良のたまり場と言われて入場禁止になったインベーダーハウス(現在のゲームセンター)と同じような規制ができてほしくなかったから『ゲームは1日1時間』と呼びかけた」と自身のブログでつづっています

 「マナーやルールとして言うべきであって、法律で縛るまでのことではないと思う」と法制化には反対の高橋名人。仮に条例にするとしても、「子どもからビデオゲームを取り上げることになるのだから、その他に遊べる場所などを用意しないとダメ。規制の前にそんな環境作りをしてほしい」と考えを述べています。

 高橋名人が「ゲームは1日1時間」と言い始めたのは1985年のこと。当時から35年が過ぎ、状況も変わった今、ゲーム業界が業界やユーザーを守っていくためには何らかのアクションが必要なのかもしれません。

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