最近ではArm、RISC-Vなど組み込みでも華々しい活躍を見せているRISCプロセッサ。その祖先というか元祖として認識されているのはIBM 801というプロセッサだった。歴史的経緯を、IT史に詳しい大原雄介さんが解説する。
結果的に世界初となるRISC CPUであるIBM 801を世に出したIBMだったが、これに続いて投入したROMP(Research OPD MicroProcessor)は正直に言えば失敗作だった。
IBM 801が完成するちょっと前にあたる1977年、同じIBMのOPD(Office Products Division)というワープロなどを手掛ける事業部が、新製品向けの強力なプロセッサとしてIBM 801に目をつけた。ただしOPDとしてはコストとか実装面積の観点で、CPUボードではなくCPUチップになることを望んだ。かくしてOPDはテキサスにあったIBM Development Labと共同で、IBM 801をベースとしたワンチップRISCプロセッサ(最終的には2チップになったが、この程度なら許容範囲)の開発をスタートする。
当時利用できたのは2マイクロメートルのNMOSプロセスで、それもあってIBM 801のフルセットの機能は当然搭載できなかった。そこで命令フォーマットを16bitに縮小し、キャッシュは廃止(その代わり16Bytesのプリフェッチバッファーを搭載)、浮動小数点演算は切り捨て──などいろいろ変更はあったものの、10MHz駆動で4.3MIPSのCPUが81年に完成した。
これで素直にワープロを作っていればよかったのだが、妙に色気を出したIBMの上層部は計画を変更。ワープロの代わりにワークステーションを構築することになった。ところが紆余曲折があり、このROMPを搭載したIBM PC RT Workstationが世の中に出たのは実に86年のことになる。
5.88MHzのROMP(2.6MIPSほど)を搭載したIBM PC RT 6150のベーシックモデルのお値段は1万4945ドルであった(10MHzのROMPを搭載したモデルは1万7940ドルから)。
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