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なぜダイヤ改正が必要なのか さよなら「あずさ2号」「700系」

» 2020年03月25日 12時47分 公開
[佐倉瑞歩ITmedia]

 今年もダイヤ改正の季節がやってきました。今回は1970年代のヒット曲で知られる「あずさ2号」や東海道新幹線の700系車両が姿を消すなど話題も多いようです。そもそも、なぜダイヤ改正が必要なのでしょうか。

3月8日に行われる予定だった700系の引退式典は新型コロナウイルス感染症の影響で中止になりました(出典はJR東海)

連載:非テツでも楽しめる、テツ好きが注目するチマタの話題

ここでは鉄道に関するちょっとした豆知識をお伝えすることで、何となく知識が増えたなとか、みんなが知らないことが自慢できたりとか、まあそんなことを目指してお届けしていく、テツの与太話です(作倉瑞歩)


 電車の運行時刻を決めている「ダイヤ」。これは「図式」「図表」を意味する「diagram(ダイヤグラム)」を略した言い方です。どの駅に何時に止まるのか、また通過する駅はどこか、ある列車が違う列車を追い越すのはどのタイミングかなどなど、ダイヤに基づいて列車は運行されています。なお、ダイヤグラムがダイヤの形をしているのでそう呼ばれている、というのはガセです。

 かつて国鉄があった時代、ダイヤ改正は10月に行われていました。「白紙ダイヤ改正」といって、今走っている列車の運行すべてを見直して新たにダイヤを設定することもあり、その準備には2〜3年かかったといいます。

 分割民営化によりJRが発足したあとは、鉄道事業者ごとで改正が行われていましたが、最近はJR各社とも3月に改正する流れができており、これに合わせて私鉄や地下鉄も春にダイヤを改正することが多くなっています。なおダイヤ改正は混乱を避けるために土曜日か日曜日に行われることが多いです。

なぜダイヤを改正するのか?

 ではなぜダイヤ改正をするのでしょうか。その要因としては以下のものが挙げられます。

  • 新線が開通した、新駅が開業した
  • 列車の増発、調整
  • 新たな優等列車の設定
  • 新型車両の導入

 新線開通や新駅営業開始については分かりやすいと思います。新しい路線についてダイヤを設定するほか、他の路線への乗り継ぎ駅があった場合は、乗り継ぎ相手の列車の運行状況を考慮に入れて調整されることもあります。また新駅が開業すると、その駅に停車する時刻をダイヤに挿入しなければいけません。このためダイヤが変わることとなります。

 列車の増発や調整は主に輸送力強化として行われます。ラッシュ時など、乗客が多くなる場合は新しく列車を走らせ、運べる人数を多くして全体で調整し、混雑を解消するわけです。

 優等列車とは、特急や急行、快速など、各駅停車以外の列車を指します。大都市部では地域の中核都市間を停車して、多くの人を早く終点まで運ぶ列車を設定することが多いです。こうした場合に優等列車を走らせて、都市間の速達を目指すわけです。ちなみに東武アーバンパークラインでは3月14日の改正で急行運転を開始しました。こうした場合には路線全体でのダイヤ見直しが行われます。

東武アーバンパークラインの公式サイト

 新型車両の導入については、東海道新幹線が分かりやすい例として挙げられます。東海道新幹線にはこれまでさまざまな形式の車両が走っていました。のぞみはN700系という車両で運転しているのに、ひかりやこだまには700系や300系といった異なる車種が混ざっていると、最高速度がその車両によって異なるので、駅間を運転する時間が変わります。もっと早く運行したいのに、足の遅い列車が前を走っていては、それがボトルネックになってしまいます。このためダイヤを細かく調整する必要があったわけです。

 しかしこの春、3月14日のダイヤ改正で、最高時速270kmしか出なかった700系を引退させて、こだまからのぞみまで、最高時速285kmで運行できるN700系に統一されます。これにより駅間の到達時間も短くなるので、より密度の高いダイヤを組めるようになります。この結果、のぞみの最大運転本数が1時間10本から1時間12本に増えました。東京〜新大阪間の所要時間も最大7分短縮され、全てののぞみが2時間半で新大阪に到着するようになります。

補足

 JR東海は3月24日、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う利用客の減少を踏まえ、東海道新幹線、在来線特急列車の一部運休および運転計画の見直しを発表しました(発表資料)。ダイヤ改正ではのぞみ臨時列車の大幅な増発を計画していましたが、これらを中心に4月に運転する一部列車を運休、ゴールデンウィーク期間についても5月1日〜6日の運転計画を見直しています。見直し後の運転本数は19年と同程度としています。


春のダイヤ改正での目玉

 ここからは筆者の心にグッときたダイヤ改正についてご紹介していきます。

サフィール踊り子号のデビュー

 東京〜伊豆急下田間に新たな観光列車「サフィール踊り子」号が登場します。これまで同区間では251系「スーパービュー踊り子」号が走っていましたが、車両導入開始から20年となる節目に引退となり、新たにE261系によるサフィール踊り子号の運転が開始されます。

 E261系にはカフェテリアが設けられ、そこでは神保町にある日本料理店「傳」の料理長、長谷川在佑氏が監修した、伊豆への旅を彩るラーメンが提供されます。なお、サフィール踊り子は全席がグリーン車で、個室のほか1+1列のプレミアムグリーン車も設けられます。

中央線快速、中央・総武線各駅停車の輸送体系の変更

 今は早朝や深夜時など、快速運転を行っていない場合には、黄色ラインの列車を使った千葉発御茶ノ水行き各駅停車、オレンジラインの列車を使った東京発高尾方面行き各駅停車といった行き先の列車が走っています。高尾方面行きの各駅停車の場合は御茶ノ水で、本来は黄色ラインの電車が走っている線路に入って各駅停車で運行されているのです。

 しかし3月14日のダイヤ改正以降は終日、東京〜高尾駅をオレンジラインの快速が、千葉〜三鷹間の中央・総武線を黄色ラインの各駅停車が走るようになります。

 このほか深夜に東京〜高尾間で中央特快が運転されます。下りは東京発23時45分、終点高尾着は0時45分です。その時間に間に合えば、早く家へ帰れるようになりますね。上りは大月発22時9分、東京着23時44分の特快が設けられます。この列車が東京駅で折り返して高尾行きの特快になるのでしょう。

あずさ2号、なくなる

 狩人のヒット曲「あずさ2号」を覚えている方も多いかもしれません。新宿駅を8時ちょうどに発車して松本に向かう列車でした。歌がヒットした1977年当時は発車順に列車号数が割り当てられていたため「2号」だったのですが、その1年半後、1987年10月のダイヤ改正時に、下りは奇数、上りは偶数となったので、「松本行きのあずさ2号」はなくなりました。

 その後も上りのあずさ2号は消滅したり復活したりしながら走っていたのですが、今回の改正で、中央線を走っている特急あずさ、かいじでの号数が、「あずさ9号」「かいじ11号」「あずさ13号」「かいじ15号」などのように通し番号となるため、あずさ2号に相当する列車は「かいじ2号」となり、あずさ2号という呼称が消滅します。

 竜王7時12分発のかいじ2号と、松本6時半発のあずさ4号は取り換えられないですかね。甲府の到着時間は7時16分に7時39分と20分程度しか変わらないのですから……。

常磐線全通

 東日本大震災の津波や福島第一原子力発電所の事故により不通となっていた富岡〜浪江間が復旧され、3月14日から運転が再開されました。鉄道マニア的にはようやく復旧したかという感がありますが、運転が再開される駅周辺に住んでいた方々も、まだ戻れる状況ではなく、手放しで喜ぶわけにはいきません。しかしまずは再開した。これが大きいと思っています。

常磐線の運転再開区間(JR東日本のニュースリリースより抜粋)

 常磐線全通に伴い、かつて走っていた仙台行きの特急「ひたち」の運転も再開されます。1日3本、下りは「ひたち3号」「ひたち13号」「ひたち19号」が、上りは「ひたち14号」「ひたち26号」「ひたち30号」が品川・上野〜仙台を直通で結びます。

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