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RISCとCISCの境目がなくなる Pentium Proの逆襲RISCの生い立ちからRISC-Vまでの遠い道のり(3/3 ページ)

» 2020年05月11日 10時42分 公開
[大原雄介ITmedia]
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 2000年代に入ると、もうほとんどのメーカーがCISCアーキテクチャの維持を放棄、RISC系への移行を済ませてしまっていた。

 例えばIBMはCISCベースのAS/400から、RISCベースのPowerPCにまず移行、2004年にはより強力なPOWER4に移行している。メインフレーム向けのSystem/390は2000年にzシリーズ(のちにIBM Zに改称)に移行するが、このzシリーズは内部的にはRISCの実装になっており、2007年あたりからはPOWERプロセッサと一部設計を共用するような格好になっている。

 そんな訳で、2000年代からはCISCらしいCISCはx86(と、ごく一部8/16bitのコントローラー向けの小さなコア)のみとなり、そのx86も命令セットこそCISCであるものの、中身はRISCになってしまったことで、事実上CISC/RISC論争は消えてしまった格好だ。

 それどころか、RISCでありながら、更に内部で命令変換を行うといったプロセッサまで出てきた。ArmのCortex-A70世代のアプリケーションプロセッサでは、一部の命令に関しては内部でMicroOps Fusion(複数の内部命令を1つにまとめて処理する)を実施していることが明らかにされている。

 要するに、人間あるいはコンパイラがプログラミングしやすいRISC命令と、プロセッサ内部で処理しやすいRISC命令は必ずしもイコールではなく、両方を満足させるためには命令の内部変換をかけるのが一番楽という話で、こうなってくると「そもそもRISCとはなんぞや?」という話に立ち返る必要が出てくる。

 ただこの頃になると、もう命令セットそのものはどうでも良く、むしろOut-of-orderで何命令同時に処理できるのか、メモリのアクセス帯域をどの程度にするのか、どんなプロセスで製造しているのか、などの方が性能に大きな影響を与えるようになってきた。

 多段階の分岐予測や投機実行、SMT(Simultaneous Multithreading)なども性能に大きく関係してくるようになり、相対的に「命令セットなんてどうでもいい」(どんな命令セットでも、どうせ変換して実行するのだから同じ)という風潮が、ハイエンドプロセッサマーケットの2000年〜2010年あたりのトレンドであった。

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